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TGR2018【大賞】選評

今回の大賞審査会で、大賞候補として推薦された作品は、

空宙空地(名古屋)3都市ツアー「轟音、つぶやくよう うたう、うたう彼女は」

RED KING CRAB 2018「ガラスの動物園 The Glass Menagerie」

劇団 風蝕異人街「身毒丸」

マイペース「この夜が明けてくれるな」

劇団パーソンズ×劇団fireworks提携公演「さよならノクチルカ」

きっとろんどん「ひみこーる」

プロトパスプア#4「春のめざめ」

世界エイズデーシアター「TEA FOR TWO ~二人でお茶を~」

劇団こふく劇場(宮崎)「ただいま」

の9作品でした。

 

これらの作品について協議を行ったところ、栄えある大賞には『世界エイズデーシアター「TEA FOR TWO ~二人でお茶を~」』が選ばれました。

本作品は、上演意図において、エイズの蔓延防止、HIV感染者・エイズ患者への差別や偏見の解消を目的とした、他の作品とは異なるものでした。演劇という手法を活用しつつ、多くの人に伝わるエンターテイメント性にすぐれ、その目的を果たしていたと思われます。と同時に、脚本・演出・役者の3点において、もっともバランスよく優れ、完成度の高さが評価されました。

二人芝居、場所はとあるホテルの一室という設定で、会話、舞台転換、衣装から時の経過が違和感なく表現され、二人の関係性の微妙な変化がよく表れていました。上演時間100分の中の穏やかな時間の経過が観客を引き込み、25年間の時の流れを感じることのできる作品でした。

 

優秀賞の2作品(空宙空地「轟音、つぶやくよう うたう、うたう彼女は」、劇団こふく劇場「ただいま」)は、ともに道外からの参加で、自分たちの活動拠点を遠く離れた札幌、北海道の初めて出会う観客に、自分たちの舞台を届けたいという強い意志が感じられました。偶然にも、両作品ともに私たちのすぐ隣、身近にあるかもしれない生活、人生をモチーフに、それぞれの座付き作家(空宙空地:関戸哲也氏、こふく劇場:永山智行氏)独自の視点で切り取られ、フォーカスされた作品で、観劇しながら、生きること、人生とは?に対して、想像もたのしく考え、想いを馳せることのできるものでした。

○空宙空地「轟音、つぶやくよう うたう、うたう彼女は」

母娘2世代の40~50年を70分の上演時間で描き、公演のキャッチフレーズ「ジェットコースターヒューマンコメディドラマ」の名のとおりの舞台でした。流されていく、ともすると置いて行かれそうになる主婦2代の女性の生活を中心に、各場面に「そういうことある、ある」の笑い(共感)がちりばめられ-特にパートシーンが印象的-、複数の可動式壁の自在な動きが、スピーディーなシーン転換を可能にし、功を奏していました。母の人生のリフレインかのように、しかもスピードアップして繰り返される娘の人生、ひな人形などの複線の回収も見事でした。

○劇団こふく劇場「ただいま」

姉が行方不明になっていることのみが、事件といえば、事件である家族の日常生活を淡々と、しかしながら表現としては、繊細な工夫と大胆な試みが施された作品でした。会話部分が宮崎弁で、ト書き部分が標準語で語られた脚本は、理解もしやすく、かつ、宮崎弁(方言)の美しさ、なつかしさを際立たせるものでした。また、小さな太鼓、ウクレレ、鈴などの身近な楽器も取り混ぜ、入れ代わり立ち代わりの複数人で語られるト書き部分(ナレーション)の音の響き、劇中の歌が美しく、音として楽しいものでした。身体表現にも工夫が施され、ある種の型(移動時の中腰・すり足、会話時の正面静止状態)を用い、俳優の身体に縛りを入れることにより、猥雑な身体情報がそぎ落とされ、登場人物の中核にあるものが、浮き彫りになる効果が感じられました。

 

審査員賞の『RED KING CRAB 2018「ガラスの動物園 The Glass Menagerie」』は、劇団として初めて既存の戯曲に挑戦し、名作と真摯に丁寧に向かい合い、自分たちの表現として成立させたことが、評価を受けました。俳優の好演とともに、舞台美術もよく研究されていました。

また、受賞には至りませんでしたが、この作品だけでなく、『わんわんズのどん底』、『春のめざめ』など、若手劇団が名作に注目し成果を上げていることに高い評価が集まりました。

札幌劇場連絡会

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