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TGR札幌劇場際 NEWS


TGR札幌劇場祭2017 講評ラスト

約1ヶ月間に渡って開催されたTGR札幌劇場祭2017。
今年も、エントリー作品と向き合っていただいた審査員の皆様に心より感謝を申し上げます!
講評ラストは審査委員長の梅津 愛さんです

【プロフィール】
札幌生まれ、札幌育ち。
札幌のカルチャーシーンに、広くアンテナを張りつつ暮らしている。
舞台作品を観る側の人たちが、感想を発信するサイト〈札幌観劇人の語り場〉に書き手として参加しています。

【講 評】
TGR2017に関わったすべての皆様、お疲れさまでした。今年も一か月間、“観る側”として目一杯楽しませて頂きました。今年から審査方法が大幅に変わり、公開審査・講評が無くなった代わりに、審査委員長が大賞エントリー作品の講評を書く形となりました。審査員長一人の意見というよりも、他の審査員の感想や審査会での発言等も盛り込むように努めたつもりなので、今後の参考にしていただければ幸いです。文体がバラバラなのは、どうかご容赦下さい。なお、優秀賞・特別賞・オーディエンス賞は観劇順になります。

【大賞】
yhs『yhs結成20周年記念公演「白浪っ!」』
納得の大賞受賞。審査会でもお伝えしましたが、観劇した審査員全員が支持しました。(こんなにあっさり大賞が決定していいものかと、逆に不安になるほどでした…)歌舞伎をベースにした作品だけにエンターテイメント性が高く、衣装も華やか、役者も多彩!と、楽しい要素がてんこ盛りな作品でした。橋・段差・舞台後方の斜めに切れた部分等を上手に利用し、動きのある、目を引き付けられる舞台だったと思います。歌舞伎やyhsを知らない人でも、充分に楽しめる作品。今後再演を重ねて、札幌の観客に愛される作品の一つになることを願います。

【優秀賞】
トランク機械シアター『ねじまきロボットα ~ともだちのこえ~』
毎年、シリーズもので質の高い、安定感のある舞台を見せてくれるトランク機械シアター。年々、人形の扱いが上手になっているといった声が審査会ではありました。内容も、言論統制や異質なものを排除するといった不寛容な世相を反映した重層的な話で、大人にも見応えのあるものでした。そして相変わらず、観客へのホスピタリティの高さが凄い!絵描き歌や観劇中のお約束の歌など、開演前の待ち時間でも退屈しないよう、楽しませようという姿勢が◎。しかもその内容がEテレ並みのクオリティで、大人も子供も存分に楽しんでいました。

【優秀賞】
座・れら『第1407回札幌市民劇場 座・れら第13回公演 「アンネの日記」』
きっちりと作られた正統派な作品。私は原作を読んだことがなかったので、騒々しいアンネに最初は面喰いましたが、ただでさえセンシティブな10代の時期を家族以外の他人と一緒に閉じ込められた空間で過ごす。そのやるせなさ・圧迫感、ひりひりとした空気を痛々しく思いながら観ていました。観客側は、この家族の行き着く先を知っているからこそ、必死に希望を見出そうとする姿勢をいじましくも、やるせなくも思う。「普通の15歳のアンネに思いを馳せた」と話した審査員もいたように、戦争という個人ではどうすることも出来ないことがもたらす悲劇を〈戦争に振り回された一人の少女の話〉として描く良作でした。
おきゃんなアンネを演じていた早弓結菜さんは勿論ですが、同じ隠れ家に住むペーターを誠実に演じていた信山E紘希さんも好演だったと思います。

【特別賞】
MAM『月ノツカイ』
炭鉱(ヤマ)を舞台にした家族の話。私はフィクションと思って観ていたのですが、モデルとなったであろう北炭夕張新炭鉱のガス突出事故をリアルタイムで知る審査員の方にとっては、当時を思い起させる作品でもあったようです。作中の時間軸が過去と現在をいったりきたりする為、観ながら多少戸惑う点もありましたが、二つの時代を繋ぐ留守番電話のエピソードがとても良かったです。
健司役の遠藤洋平さんを俳優賞に推す声もありましたが、個人的には会社側の人間であることに葛藤しながらも抗員達に寄り添う横塚役の本間健太さんが、情感細やかな演技で印象に残っています。

【特別賞】
ニッポンの河川『大地をつかむ両足と物語』
役者が、音響・照明も担うという演出手法が斬新。作りこまれた完璧さ・精巧性はないけれど、上演中にドローンが飛ばなかったり、カセットが上手く動かなかったりといった(良い意味での)“粗さ”を楽しむ作品なのかなと思いました。「固定概念を壊す演劇」と評した審査員もいました。観るたびに色々な表情をみせてくれそうな作品なので、是非また札幌で再演して欲しいです。

【特別賞】
proto Paspoor -プロト・パスプア-『ある映画の話』
〈実験的な作品・試行錯誤・研ぎ澄まされた作品〉等の言葉が審査会では聞かれました。真っ黒な舞台セット、観客を誘導するトライアングルの音、決まった料理の順番に逆らうことが出来ないコース料理の様に粛々と進む話を“観せられている”印象を受けました。トライアングルのルール、私は面白かったのですが、上から目線の口調に不快感を示す審査員もいました。口調はともかく、確かに不安になるほど長く待たされることもあり、もう少しスマートに誘導してくれた方が、より演出効果が引き立ったかなという気はしました。
役者の中では〈僕の兄〉役の中村雷太さんが鬼気迫る演技で、一部審査員の話題にあがっていました。

【審査員賞】
NIN企画『「けんず」きみが傍にいた時代』(の中より『靴』)
オムニバス3本立て。なかでも受賞作である「靴」は普遍的な話で、いつの時代・どの年代でも楽しめる作品だと思いました。戦争に翻弄された家族を靴の動きだけで表現していて、4足の靴(を操る役者)しか舞台上にはなかったはずなのに、夜道を二人で歩いた様子や出征する夫を駅で見送ったときなどが、まるで映画の一場面のように思い起こされます。「無言劇というカテゴリーの中で秀逸」と評する審査員もおり、ぜひ沢山の人に見てほしい作品です。

【オーディエンス賞】
札幌オーギリング『休止興行「ラストアンサー」』
今回唯一の、〈演劇〉という枠にはまらない作品。観る前から、毎回内容が違う〈大喜利〉を他の舞台と同じ俎上で評価するのは辛そう…と、若干腰が引けていたのですが、観客にとても愛されている興業だという事は初めて見た私にもよく伝わりました。対戦者の回答を受けての機転の利いた答え、プロレスを模したマイクパフォーマンスや実況・解説の阿吽の呼吸。大勢の参加者(全員が舞台に立つと、空気が薄く感じたほど…)の、面白い舞台を作ろうという総意が感じられる作品でした。

【オーディエンス賞】
ELEVEN NINES presents ミャゴラ 『やんなるくらい自己嫌悪』
「死にゆくものたちの聖地」とよばれる森に集う人たちの話。と、あらすじだけ書くと陰惨な話のようにみえますが、独特な世界観を持ったコメディとして楽しませてくれました。イレブンナインの中でも若手の役者達がメインとなり、一生懸命に頑張っている感じが伝わってきて、その精一杯さが作品のトーン(生を肯定する前向きな姿勢)と合っていたように感じます。役者としてはヴィンセント藤田さんを推す審査員がいた一方で、萬屋を演じた坂口紅羽さんが好演だったように思います。

以下、観劇順です。

公益財団法人北海道演劇財団『シアターZOO企画 劇のたまご
「ぐりぐりグリム第一章:おかしな森のヘンゼルとグレーテル」』
歌あり踊りあり、お菓子の家や池などの舞台美術も可愛らしく、目に楽しい舞台だったと思います。(ただ「い」とか「ま」とか平仮名一文字の看板を、最後に並べると意味のある言葉が…というのを期待していたので何もなくてガッカリ。)内容としてはヘンゼルとグレーテルにカエルの王様を混ぜたものでしたが、最後の鉄のハインリヒの場面は、ちょっと蛇足のように見えました。

うわの空・藤志郎一座『面白半分』
話自体は一昨年のTGRエントリー作品と同じため、結末はわかって観ていました。それでもテンポよくやり取りされる台詞や、くどい位挟み込まれる小ネタによって飽きずに観ることが出来ました。この劇団は台本がない「口立て」で作品を作っているそうなので、この小ネタはほぼアドリブなのかな?多分。そのことに違和感なくスムーズに進む話に、役者の力量を感じました。

劇団words of hearts『アドルフの主治医』
去年に引き続き、史実から題材をとったオリジナル脚本で上演されている点は◎。ただ、医者なのに病気の治癒では無く、ヒトラーのクローンを作るという発想が私には少々突飛に感じました。〈不妊に悩む妻/倫理に反した命を生み出そうとする夫〉という対比の形だとは思うのですが、観ながら主人公の心情を掴みきれず、少しリアリティに欠ける気がしました。審査会では、大道具・衣装・小道具をちゃんと揃えた舞台美術を評価する声がありました。

劇団ルート1『ずっとあなたを見守って…』
役者の動きや台詞の言い方がやや単調な点や、突然、一瞬だけ音量が上がる音楽などは観ていて辛いものがありました。内容も、終盤で(伏線もなく)一気に説明されたので、駆け足な感じがして少し残念でした。ただ、この劇団の物語性のある優しい話は評価できる点だと思うので、来年以降、より一層頑張ってほしいです。

マイペース『ばかもののすべて』
初めて観る劇団でしたが、思っていたよりもずっと面白かったです。馬鹿馬鹿しい明るさのある作品。
夢追い人とか引きこもりとか、色々ダメダメなのに楽観的な男達に対して、「現実見ろよー!戦わなくていいから、ちゃんと見ろ!!」という妹の言葉が重い。隠し子の彼女といい母親といい、芯のところでしっかりしているのは女性だな、と思いながら観ていました。全編通して笑える話でしたが、あえて難を言えば上手にソツなくまとまりすぎているというか…。楽しいだけで、特別心に引っかかるものがなかった点はちょっと残念。

MAM『父と暮せば』
名作脚本+同じキャストで何度も上演されている作品なので、今回が初演の作品等と同じように評価することは難しい、という意見も審査会ではありました。確かにちょっとズルいなと思ってしまうほど、安定感のある舞台でした。俳優賞は、札幌キャストの娘役・髙橋海妃さんが受賞されましたが、同じく娘役・東京キャストの松村沙瑛子さんを推す声も審査会ではありました。札幌キャスト・東京キャスト、どちらも観たいと思わせる上質なお芝居だったと思います。

劇団・木製ボイジャー14号『ホテル』
昨年度のTGR新人賞を受賞した団体。初めて観ましたが、熱気は伝わりました。極彩色の舞台、息を乱さずに動き続ける役者達の疾走感は凄かったし、自分たちのやりたいことをギューギューに詰め込んだ作品にみえました。内容はぶっ飛んだ話ではありましたが、設定からも美術からも多分に寓話的な意味合いを含むものにみえ、想像の余地があるものでした。(観ている最中は、そのハチャメチャな話についていくのがやっとだったので、今思い返してみると…ですが)一方で、演じている人が一番楽しく、観ている人を少し置き去りにしているような印象を受けました。

劇団コヨーテ『路上ヨリ愛ヲ込メテ』
〈独自の世界観に裏打ちされた作品〉という事は伝わりました。でも正直、私にはよく分からなかったです。万人受けするエンターテイメント性と対極にある作品、自己表現の作品だと思いました。それが肌に合う人は好きだろうけど(現に観た回は満席・観客は満足げだったし、コヨーテを推す審査員というのが代々いるので)私は咀嚼できませんでした。勿論〈みんな楽しく・わかり易く〉が演劇の評価する点ではないので、こういった作品が札幌で上演されることはとっても意義あることだと思います。でも呆然とするくらい分からなかったなぁ…。
分からないなりに、脇田唯さんの静謐な感じの演技が印象に残りました。

札幌ハムプロジェクト『象に釘』
最初、二人の関係性や、この場所にいる背景などが掴めず戸惑いましたが、そういう作品(不条理劇)だと思って観ると、すんなりとその不思議な空気を楽しむことが出来ました。私が観た回は割と訥々としたせりふ回しでしたが、もっと畳み掛けるような丁丁発止とした台詞のやり取りだと、また違って見える二人(毎回キャストが違ったので、観た回によって全然印象の違うお芝居だと思いますが…)になるだろうな、と思いながら観ていました。

札幌ハムプロジェクト『Dr.サタン、まちがってサンタをつくる』
『像に釘』が変化球だとしたら、こちらは直球の二人芝居。少女と老人の、ああでもないこうでもないといった、やり取りがテンポよく進み、安心して観ていられました。どこまでが台詞で、どこからがアドリブ?と思う場面が何度かありましたが、それをスマートに劇の中に落とし込んでいました。舞台上で物を作って食べる、ということに否定的な審査員もいましたが、私は普段の劇場では意識することの無い嗅覚を刺激されて、なかなか面白かったです。でも悪魔ご飯を食べたいかと言われたら、丁重にお断りしますが…。

弦巻楽団『#28.5「リチャード三世」』
2倍速シェイクスピア。台詞のスピードが早過ぎて、話は面白いのになかなか頭に入ってきませんでした。ただ、演技講座受講生の発表の場であることを踏まえると、あの膨大な台詞を間違えることなく、途切れることなくスラスラと発することが出来るのは、練習の賜物だなと感心しました。また、シェイクスピアという古典作品に挑戦する姿勢には好感が持てるといった意見が、審査会ではありました。

以上、大賞エントリー20作品。皆様、本当にお疲れさまでした。
3年間審査員を経験させて頂き、大変だったけど本当に楽しかったです。こんなに密度の濃い観劇の機会は多分もう二度とないと思うので(笑)貴重な経験をさせて頂いたこと、感謝しております。来年以降は、札幌演劇にちょっと詳しい(?)一観客としてTGRを、演劇を観ることを楽しみたいと思います。
3年間、本当にどうもありがとうございました。

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