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TGR札幌劇場際 NEWS


TGR札幌劇場祭2017 講評②

約1ヶ月間に渡って開催されたTGR札幌劇場祭2017。
今年も、エントリー作品と向き合っていただいた審査員の皆様に心より感謝を申し上げます!
講評2回目は審査員の中脇 まりやさんです

【プロフィール】
札幌生まれ、札幌育ち。
一般社団法人AISプランニングスタッフとしてコミュニティ&レンタルスペース「オノベカ」の運営や企画を担当している。
小学生の頃以来見ていなかった演劇を見るようになったのはここ2,3年。

【講 評】
札幌劇場祭TGR2017にご参加の皆様、運営の皆様、一ヶ月間大変お疲れ様でした。
濃密な一ヶ月を今年も過ごさせていただきました。ありがとうございました。
今年から審査及び発表方法が変わるなどして、個人的に作品について述べる場はなかったので、こちらで“本当に”個人的な感想等を書かせて頂こうと思います。
以下、観劇順です。

〇札幌オーギリング 「ラストアンサー」
名前は知っていたものの、審査員にならなければ行かなかったであろうオーギリング。
単純に大喜利×レスリングという構図が面白く、チームや個人ごとに投げられる紙テープや様々なグッズ展開など、コツコツ回数を重ねてこそなのだろうな、と思いました。
きっと来れば来るほど楽しいステージだったのではないかと思います。とはいっても初心者でも十分に楽しめました。
思い入れの強さもよく分かったのですが、締めが湿っぽすぎて個人的についていけなくなりました。

〇座・れら「アンネの日記」
子どもの頃から「アンネ」の名前は知っていながらも、恥ずかしながら、実際に著書や物語には触れる機会はなく、過ごしてきました。
わたしが15歳のとき、アンネと同じ境遇にあったら、一体わたしはアンネのようにできたでしょうか。今の歳でさえ、あらゆるものから身を隠し、朝から夜まで身動きがとれないなんて、気が狂いそうになるに決まっています。遠い国の、遠い昔に実際にあった出来事が、こんなにも間近に感じられたのは何とも言い難い出来事でした。上演時間の長さは気になったものの、アンネの生涯を知ることができてよかったです。アンネが恋をし、大人の女性になっていく様が心に残りました。わたしの中での女優賞は、アンネ役を演じた早弓結菜さんでした。

〇シアターZOO企画「ぐりぐりグリム」
音楽の親しみやすさや、舞台装置の面白さ(伸縮可能な家!やポッキーのおうち)がありました。シーンの繰り返しのある部分は、次はどんな展開になるんだろう?とワクワクしました。子どもにはまだ少し早いシュールさ、みたいなものも感じられました。カエルの声が鳴り響くエンディングはちょっと怖かったです。

〇うわの空・藤志郎一座「面白半分」
今年で2度目の観劇になりました。「村木さんのセンスの塊」の舞台に、なんのネタが出てくるかな、と思うのでした。さすがに劇団員の方の返しはお見事ですね。頭の回転の速さを感じました。

〇トランク機械シアター「ねじまきロボットα~ともだちのこえ」
立川さん自ら人形を持ち、会場外で呼びかけをしたり、生の子どもの反応をうまく生かしたり、ホスピタリーの高さをとても感じます。役者の皆さん自身が楽しまれていることが感じられます。今回、アルファとパピポの声域、というか声音が同じように感じられて、聞いていてちょっとつらい部分がありましたが、子ども向けの作品であるのに多様性や共生といったテーマは、今の世相を反映しているようでした。共生を願ったのに、新たな排除が生まれてしまう(スーツ大臣をはねのけてしまう)。でもそのことに対して、アルファの「友達になれなかった」というフォロー、更には「今日はだめでも明日は大丈夫かもしれない」という願望が今回のグッとポイントでした。
また、別の視点ですが、こぐま座があって、シアターZOOがあって、キタラがあって。成長段階によって、観劇体験を子どものころから積める中島公園周辺のポテンシャルを感じました。

〇MAM「月ノツカイ」
こんなに観劇中に泣いたことはない!というくらい泣きました。わたしの母方の祖父は夕張の炭鉱夫でした。途中でやめて札幌に出てきたようでした。当時のことを、映画が安く見れたとか、銭湯に安く入れたとか、よく呑んだとか、そういう話は聞くものの、仕事の話はさほど聞くことがありませんでした。祖父が背負っていたものを垣間見たような気がして、今はもう聞けないことを悔やみ、もっと理解したかった、と思ったのでした。暗闇のなか、いくつかのライトが光り、仲間を探すシーンが一番胸に詰まりました。静かに判を押す由里子の姿も心に迫りました。もう一度見たいです。わたしの中での男優賞は、遠藤洋平さんでした。

〇マイペース「ばかもののすべて」
一緒に暮らしてたのに、父親が相撲すきだったこと知らないの!?という動揺から始まってしまいましたが、三人兄弟それぞれのキャラが面白く、音楽センスのない兄のスピッツのくだりがすきでした。

〇ELEVEN NINES presents ミャゴラ「やんなるくらい自己嫌悪」
とにかく万屋の坂口紅羽さんとコールガールの菊池颯平さんが秀逸でした。TGR授賞式後の交流会で菊池さんとお話させていただいていのですが、コールガールだと気づいていませんでした。「声がかれてて…」とお話されていて、(はて、どの役だっただろうか)と思っていたのですが、わかって納得!この場を借りて謝ります、すみませんでした!!

〇words of hearts「アドルフの主治医」
諸事情により、途中からの観劇になってしまいました。
前年の「ニュートンの触媒」に続き、世界の伝記ものシリーズは企画として興味深いと思います。妻の身体まで利用しようとしたことにはぞっとしましたが、もっと非道な実験を沢山された方だったのですね。飛世さん、美しかったです!

〇MAM「父と暮らせば」
東京キャストで拝見しました。「アンネの日記」のように、歴史を知る足掛かりとなりました。初めて「父と暮らせば」を観たのですが、途中まで父が幽霊であることに気付けませんでした。でもやはり、涙を流さずには観られない作品でした。前に座っている方がおそらくよくお話を知っている方で、割と食い気味に泣かれていて、そっちの方が気になってしまったのでした。観劇ってこういうこと、あるよなあ、と思ったりしていました。観劇後、宮沢りえ主演の映画「父と暮らせば」を観たり、今まで何度も何度もいろいろな方によって上演されている作品だと知りました。これからもいろんなキャストや演出で見続けたい演目になりました。

〇NIN企画「けんず きみが傍にいた時代」
演劇っていくつかジャンルがあるように思うのですが、新しいジャンルを知った気分でした。特に「靴」は無言劇でありながら、切々と語りかけてくるようでした。表現方法もシンプルでありながら、目からうろこでした。全編とおして、あまり今まで出会うことのできなかった、ノスタルジックで温かみのある作品でした。

〇ニッポンの河川「大地をつかむ両足と物語」
「やられたー!!!!!」と思った舞台でした。照明も音響もすべて自分たちで、というのはそういうことだったのですね。最初、電気がつかないハプニングに「まだ始まってませんからね!!」と言われても、(本当はもう始まっているんじゃないか)と疑っていました。音響がカセットテープなのも、わたしは気に入ってしまって、あのアナログの音はふつうの舞台では聞けない。そしてカセットを引き抜き、床を滑らせる音!セリフのテンポは大変そうだなと思いましたが、表現方法の特殊さに、次は何が、次は何が、と楽しみました。他のお話も見たいし、何より野外で見てみたい劇団でした。アフタートークでは公開ダメ出し。こんな微妙なニュアンスの違いで舞台はどんどん変わっていくのか、と驚きました。どんな舞台も終わりがなさそう…。

〇木製ボイジャー14号「ホテル」
何のお話だったのか、理解することはできなかったのですが、熱量だけはすごくて、置いてけぼりにされて、頭の上をスコーーーーンと劇が、通り過ぎてしまった印象でした。随所随所にintro?とか寺山修司?とか思った場面があって、これからの創作がどうなっていくのか気になります。

〇コヨーテ「路上ヨリ愛ヲ込メテ」
ボイジャーやproto Paspoorもそうかな、と今回見ていて思っていたのですが、頭の中の表出みたいな舞台だと思いました。ちょっと抽象的で、つかみにくい、作者の世界観で魅せるタイプの。シリアスだと見せかけて、愛嬌とユーモアがあって、それでいてちょっと気持ち悪い(わたしの中での褒め言葉です!)。劇名しかり、亀井さんの言葉がすてきだなとわたしは思っています。

〇ハムプロジェクト「象に釘」
夏に「地獄変」を見て、きれいだった小田川さんが見たくて初日を観ました。テンポはよくはなかったですが、脚本がとってもすきだと思いました。望む「終わり」に辿り着けなくて、知っているような知らないようなひとと(象と?)何度も何度も出会って、ルールを作って、失敗して、またやり直す。ちょっと世にも奇妙な物語みたいでもある。最初から最後まで割と淡々としていて、静かな劇ですが、わたしはすきでした。同時期にカフカの「変身」やトゥーサンの「浴室」を読んでいたので、やや奇妙な物語に親近感がありました。「象に釘」を見て、実は初めて脚本を買いました。また観たいです。

〇ハムプロジェクト「Dr.サタン、まちがってサンタをつくる」
たこやきに悪魔ごはん、ニヤニヤせずにはいられませんでした。ちょっと気の抜けた感じのすがのさんと天野さんの様子も面白くて、ところどころで笑わせて頂きました。

〇弦巻楽団「リチャード三世」
わたしにはシェイクスピアはいつも難しくて(本筋はすごくシンプルなお話なのではないかと思うのですが)、外国の人名というところだけで躓いてしまいます。もう、全然ついていけない、と冒頭で思ったので、ぼんやりと見ることにしていました。劇を評価するというよりも、この企画を評価すべきだ、と途中で思いました。昔のひとが作り出した作品の、これだけ膨大なセリフを頭に、身体に叩き込んで、稽古を繰り返し、実際にお客さんの前で演じる、ということが、演劇を学ぶ方にとって、ものすごくよい体験で、力になっていくのではないかと思います。

〇yhs「白波っ!」
思い返す度に、華のある舞台だったと思います。舞台の使い方も面白く(奥行というよりも上下に使っていた印象)、笑いのネタも随所にちりばめられていました。昔の作品からのネタもあったのだと思いますが、それを知らないひとでも楽しめるやさしさがありました。江戸言葉も聞いていてどんどん馴染んでいくのを感じました。アルトさんの赤ちゃん役が面白く、出番が楽しみでした。エレキさんも本当に素敵な役者さんだなあと思いながら観劇していました。再演楽しみにしています!

〇proto Paspoor「ある映画の話」
小佐部さんの作品はまだ3作品しか見たことがないのですが、こういう光の似合う作品がすきだなと思いました。誰の話か、あなたか、わたしか、わからなくなる。でも暴力的な感情に共感できないのでした。

※ルート1「ずっとあなたを見守って…」は諸事情により観劇することができませんでした。

TGR審査員としてのこの期間は、観劇者としての目を養わせていただいているような気分で、よい勉強になっています。
また来年、どんな劇に出会えるか、楽しみにしています。
お疲れ様でした。ありがとうございました!

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