SAPPORO ART STAGE 2016



TGR札幌劇場際 NEWS


TGR札幌劇場祭2016 講評ラスト

TGR札幌劇場祭2016、講評ラストはTGRを主催する札幌劇場連絡会会長の藤村智子さんです。
TGR2016の各劇場の企画を振り返っています。
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【プロフィール】
 札幌市芸術文化財団で主に札幌市教育文化会館の自主事業を担当。その後、北海道文化財団コーディネーターを経て、現在同財団理事。TGR札幌劇場祭審査員を2006年のスタート時から3年間務める。2012年から札幌劇場連絡会々長。他にNPO法人コンカリーニョ理事、公益財団法人北海道演劇財団評議員、公益財団法人札幌市芸術文化財団評議員、札幌演劇シーズン作品選定委員など。

【講 評】
 TGR札幌劇場祭2016は、11月1日~12月4日迄の34日間、32団体が参加しました。このうち大賞に18団体、新人賞に7団体がエントリーしました。札幌劇場連絡会を構成する10劇場による劇場企画の舞台芸術祭という、全国にも例を見ないスタイルのフェスティバルが11年目という折返しの年を迎えたことは感慨深いものがあります。
 TGR2016の各劇場の企画を振り返ってみたいと思います。

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 シアターZOOは、6プログラムの中から大賞に青年団リンクホエイ「珈琲法要」(東京)が、また特別賞「作品」賞は劇団カチノル「お伽の棺」(韓国・光州広域市)が受賞した。「お伽の棺」は北海道文化財団が光州広域市との10年にわたる交流事業として招聘し、ZOOで公演したものである。ZOOは他に柄本明が率いる東京乾電池「授業」、 地元札幌からは札幌ハムプロジェクト「masterpiece~キミはボクの最高傑作~」、弦巻楽団「裸足で散歩」、新人賞にエントリーした総合芸術ユニットえん「紡人‐つむぎびと」というラインナップ。外国及び東京からプロ劇団を含め3本、地元3本と、目を引くプログラムのようではあるが、何か物足りない。付属劇団札幌座が参加していないのだ。周年記念事業として9月と2017年2月に大きな公演があり、また財団本体の運営体制の改編など様々な要因があったとは思うが、札幌座がTGRで占める存在は大きい。ぜひ来年は札幌座作品の参加を期待したい。 

 コンカリーニョもまた10周年を迎えた。「生活支援型文化施設」というユニークな切り口で地域に根ざした劇場として、またシアターZOOと並んで札幌演劇の拠点劇場として実績を積んできた。その10周年記念事業としてコンカリーニョプロデュース作品「ちゃっかり八兵衛」が特別賞「企画」賞を受賞した。スタッフ、キャストに今札幌で考えられる最強の実力派中堅・若手を揃えて、舞台と客席がまさに一体となった空間を創りあげ、見事に会場を沸かせたが、大賞に一歩届かなかった。しかしあの陣容と劇場空間の創出は、コンカリの10年の歩みを物語るに十分なものがあった。他にRED KING CRAB「カラッポ」、劇団アトリエ「蓑虫の動悸」、新人賞にエントリーした総合学園ヒューマンアカデミー札幌校「真夏の夜の夢」等、計4作品のプログラム。そのうち劇団アトリエ「蓑虫の動悸」が大賞候補5作品に残った。
 
 開設記念でいえばBLOCHも15周年を迎えた。いまやBLOCHは札幌の若手劇団が一度はお世話になる劇場であり、TGR新人賞の多くはこの劇場から輩出されている。今年も劇団・木製ボイジャー14号「拝啓 臆病者共」が新人賞を受賞した。近年のTGRは新人賞を目指す若手劇団の真剣さが目につく。自分たちの現在地を確かめて次へのステップとしたい意欲の現れだろう。他にBLOCHのプログラムは劇団プラス+「NAMARA」、劇団コヨーテ「身毒丸」、東京からうわの空・藤志郎一座「ONE DAY/『Will』」、演劇ユニット カラフルホリデー「ムーンライト ラズベリー」、劇団ひまわりSPクラス「おいてけ堀のはげちゃびん」、劇団ロクデナシ「ビューティフルガーベッジ」というラインナップ。上記7劇団のうち、大賞にエントリーしているコヨーテ、藤志郎一座、ロクデナシ以外の4劇団が新人賞に挑戦している。また賞にエントリーしていないが札幌オーギリング「キングオブオーギリング」がTGRに参加した。

 今年もPATOSは自在な空間を創る劇場の可能性を発揮した。テアトロ・マアルイin風蝕異人街「リア王」、劇団words of hearts「ニュートンの触媒」、in the Box「そう」の3本が大賞エントリーした。3作品ともそれぞれ独自の構成でありながら舞台と客席の敷居が低く、一体感が生まれる作りになっていた。words of hearts「ニュートンの触媒」は大賞候補5作品に残った。受賞には至らなかったが今後の躍進が期待される。賞にエントリーはしていないが世界エイズデー札幌実行委員会が「クリス・アザー・ストーリー」でTGRに参加した。

 こぐま座は国内初の公立人形劇専用劇場として今年40周年を迎えた。周年行事は7月~8月にかけて行われ、人形劇師沢則行氏による野外での巨大人形劇などが話題になった。さて、TGRのプログラムはトランク機械シアター「ねじまきロボットアルファー ~わすれんぼうのつぎはぎ~」が大賞にエントリー、この他にエントリーはしていないが人形劇団ありんこが人形劇「たのきゅう」「みんなでやろう人形劇」等で、TGRに参加した。トランク機械シアターは今年も良い作品を発表し、オーディエンス賞のうちホームラン王となった。劇場が働きかけて、優れた人形劇団のTGR参加を期待したい。

 やまびこ座は劇団ルート1「私に最期のさよならを」、新芸能集団乱拍子「いっすんさきは夢」の2本が大賞にエントリー、「第45回札幌人形劇祭」がエントリーはしていないがTGRに参加した。エントリー作品のうち、新芸能集団乱拍子が「審査員賞」を受賞し、同時にオーディエンス賞の首位打者賞も受賞した。北海道で、伝統的な民俗芸能を祝祭性豊かに伝えていく努力と技を讃えたい。やまびこ座も多くの人形劇団が活動の拠点としており、人形浄瑠璃「あしり座」の拠点でもある。ぜひ人形劇の醍醐味を味わえる作品を見せてほしい。

 今年は3本のコメディー作品が楽しめた。そのうちの2本がサンピアザ劇場のプログラムであった。ギャルソンモンケ「乙女の祈り」と、さっぽろ学生演劇祭による「桜田四姉妹、婚活をする。」である。大賞にエントリーした「乙女の祈り」は脚本家水谷龍二の作品。「桜田四姉妹・・」は学生演劇祭を構成する大学から本澤貴文の脚本で新人賞にエントリーした。ギャルソンモンケはともすれば3人の女性のドタバタで終始しがちになるのをよく堪えて健闘した。「桜田四姉妹・・」は言って見ればおバカな芝居なのだが、そのバカバカしさに好感が持てた。サンピアザ劇場が学生演劇祭を支援している姿勢は評価したいと思う。学生側はそれに応えてさらなる成長を期待している。
ちなみに3本の内の残り1本はコンカリーニョ「ちゃっかり八兵衛」で脚本家マキノノゾミの作品である。

 教育文化会館は、北海道二期会のオペラ公演「カヴァレリア・ルスティカーナ」「修道女アンジェリカ」の1企画のみ。賞にはエントリーしていないが、公演は各方面からの高い評価を得ている。演劇、人形劇、オペラとそれぞれ通底するものはありながら異質のジャンルが一堂に会するのがTGRの特徴だが、賞にエントリーした場合にどのような評価方法があるか、その課題が残っている。

 cube gardenは劇団バカdeジャネイロ「笑いの階段vol.7」、札幌放送芸術専門学校タレント総合科「SBAえすびーえー」の2本で、いずれも賞へのエントリーはしていない。
 札幌の芸能・タレントを目指す若手にとってcube gardenは札幌劇場連絡会に加盟する劇場の中で最も近い位置にある劇場と言えるだろう。札幌でその役割は貴重だと思う。

 EVENT SPACE EdiTでは今年参加プログラムはなかったが、多くの劇団にこの空間の活用を試みてほしいと思う。

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 以上、TGR2016の各劇場のプログラム等について概観しました。TGRは1年ごとに振り返りをし、軌道修正を積み重ねて、いつの間にか11年目を迎えていたというのが実感です。見直すべきところはまだまだ尽きず、課題山積ではありますが、劇団の成長を願い、演劇が市民の身近にある、そういう環境をつくりたいという思いは不変です。劇団と劇場が共に手を携えて魅力あるTGRを作り上げていきたいと願っています。

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