SAPPORO ART STAGE 2016



TGR札幌劇場際 NEWS


TGR札幌劇場祭2016 講評⑧

TGR札幌劇場祭2016、講評8回目は新人賞審査員の太田真介さんです。
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【プロフィール】
高校時代から演劇を始め、20歳前後を色々な演劇の現場で過ごす。
10年ほど前に札幌に移住してからは、プラズマニア、COLOREに所属し舞台に立っていたが、近年は出演ではなく各所で制作・裏方をメインに活動。
2014年にNPO法人コンカリーニョの職員となり、札幌演劇シーズン、札幌劇場祭(TGR)の事務局として制作を担当するほか、幅広い同法人事業のコーディネート・マネージメントを主に担当している。
同法人で管理運営する、あけぼのアート&コミュニティセンターの事務局長。

【講 評】
2016年のTGR期間が終わり、1ヶ月が経ち、参加団体の皆さんは次の公演やそれぞれの生活にむかっていることと思います。
改めて、約1か月間お疲れ様でした。
審査員という貴重な機会でみなさんの作品をみることができて本当に感謝しています。
というのも、劇場の人間として働き始めてからというもの、忙しさにかまけて自分の職場での公演や、近しい人が出演する舞台くらいしか観に行くことがなくなってたのです。こんなに多くの「若手」と呼ばれる方々の舞台を観て、とても多くの事を思い、考えることができました。
僕も、以前は「出演」側の人間でした。まぁ、今もたまに出演することはありますが、演劇シーズン、TGRはじめ多くの舞台に出演されている第1線の方々にはまるで及びません。ただ、自分の作品を評価されるということは昔も今も緊張します。耳を塞ぎたいくらいです。(笑)
ですが今回は、講評ということで、思ったことの中からいくつか、みなさんにお伝えしようと思います。良くも悪くも力の籠ったお芝居を見せてもらった、せめてものお礼になればと。

お芝居は見せるもの。他人の評価は必ずついて回ります。特にTGRはそのための場です。
そして、これから僕がお伝えすることは100人、200人の観客の中のたった一人の感想です。僕一人の言葉に左右されないで、作品づくりに向かって欲しいと願っています。
お客様が「面白い」と言ったものは、面白いのです。
その中で、こんな感想を持つ人がいるんだな、と思って欲しい。自分たちが共感できるなら活かせばいいし、それは違うと信念を持って否定できるなら自分たちの思う道を進めばいい。

いつか、みなさんの作品を再び観た時に、より心に響く作品になっていて欲しいと願っています。

前置きが長くなりましたが、新人賞エントリー7作品について、少しずつ講評を。

■劇団plus+『NAMARA』
TGRの最初を飾る作品。会場に入った時にまず目に入る大木、存在感がとてもよかった。会場に入った時に目を奪われる仕掛けは個人的に大好きです。
新人賞エントリーらしく、勢いを感じる作品でした。ただ、勢いを感じるが、その勢いに持って行かれないのがもったいなかった。一つ一つのシーン、会話、ネタが繋がりきらず、どんどん押し流されていく感覚が途切れてしまう印象でした。
話の展開に途中で疑問を感じてしまうと、流れに乗れないというか。そこを、強引にでも引っ張る強さ、演出が欲しいところでした。
お話は必ずしも起承転結でなくとも構わないと僕は思っています。ただ「これが見せたいんだ」という強さが伝わるシーン、最後のヨサコイに持って行くまでの盛り上がりに物足りなさ、ある種の「収まり」を感じました。
会話が出来ているからこそ面白いネタ、単発のネタ、使い分けがされていくともっと光ると思います。

■さっぽろ学生演劇祭『桜田四姉妹、婚活をする。』
学生演劇祭、10年ぶりくらいに観ました。面白かった。
当日パンフを読んだ時からわかってしまう、女装ネタ。桑田委員長も言っていましたが、女装だけで終わらないで、もう一段先に踏み込んだネタが観たかった。
お話は、何のことはない、詐欺の話。憎み切れない詐欺師一家、畳み掛ける怒涛の喋りが良かった。
ただ、THE・悪役(コミカル)、的な立ち振る舞いに徹した方が突き抜けていてよかったかなと。リアルな悪役ではなく、「それで騙せると思ってんの!?」くらいのテイストで、「それで騙されんの!?」につながると深いことを考えずに観て、面白いのかなと感じました。
個人的には、音響・照明と舞台装置が寂しかったかと。せっかくのサンピアザ劇場、もう少し作り込むと見栄えが格段に上がると感じました。最初のサス芝居、顔の明かりが切れていたのはわざとなのでしょうか・・・?気持ち的には、僕も身長的にサスから外れてしまいがちなので(笑)共感できますが、そこは入ってて欲しかった!

■劇団・木製ボイジャー14号『拝啓臆病者共』
こちらもBLOCHでの公演、会場に入って最初に目に入るロープと箱イス、印象深かったです。始まる前から作品が見えるような・・・開演が楽しみになります。
すでに今回の新人賞エントリー団体の中ではベテランの域に入る出演者たち、今回が最後の新人賞のチャンスということで、懸ける想いが感じられました。
個人的に思うのは、やはり、どうして過去と現在を分けて描いたのか?ということです。
単純に展開の中に混ぜればいいということではないのですが、独立した2つの話がそれぞれに収束する様がお互いに効果的に見え切らなかったのが惜しまれました。
この作品「臆病者」として、描かれているのは誰なのか。何のための場なのか。何の救いが訪れたのか。(救い、とは必ずしも「生」じゃなくてもよいと思っています。)演出、演技、舞台装置を総合して、描きたいものが伝わってきたからこそ、どちらか片方(過去と現在)を軸に描く見せ方をして欲しかったなと感じました。
今後、エントリーするとなると大賞エントリーになっていく団体ですが、もう一歩、圧倒的な世界観、表現を持って挑んできてくれることを期待しています。

■演劇ユニットカラフルホリデー 『ムーンライト ラズベリー』
個人的に、どこか懐かしさを感じる作品でした。僕がお芝居を始めた頃に観た作品に雰囲気が似ていたのかもしれません。
桑田委員長も言っていましたが、背伸びをしない作品の確かさ、物語の丁寧さが評価されるところかと思います。一人の男が持つ強い想い、それを取り巻く人物たち、そして想いに巻き込まれてラストへ向かっていく流れ。好きな作品でした。
だからこそ、もっと、全体の中でのボルテージの高まりというか、ラストへ向かって収束するすべての物事で観客を引っ張って行って欲しかったと感じました。
今回、新人賞の選考の中でも非常に高い評価でしたが、もう一回新人賞にエントリーして、もっと磨き上げられた作品が観たいということで、新人賞には選ばれませんでした。
話としての持って行き方、観客を引き込む演出、もっと精査する余地はあると感じていますので、次回の挑戦に期待しています。


■劇団ひまわりSPクラス『おいてけ堀のはげちゃびん』

全体として、「しっかりと作られた」作品だと感じました。
会話、セット、物語、全てが丁寧に作られ、丁寧に見せてくれた。欲を言えば、それが少し物足りなくも感じました。
妖怪、というか、この世ならざるモノのお話は個人的に好きです。
だからこそ、綺麗に作られた会話やシーン、気持ちよりは、もっと現実離れしてもいいからぶっちゃけられている方がよかったなと感じてしまいました。
技術もあるし、会話も出来ている地盤があるからこそ、ブレずにさらに崩して積み上げて欲しかった印象です。「人間」と「そうではないもの」という2つの軸の人物の強さ、人間の持つ決して綺麗ではない感情をぶつけているのが観てみたかったと。
とはいえ、出演者の多くの方はこれから先、たくさん活躍していく方々だと思っていますので、単純に今後の生活の中で感じる重みや感情を描いていけるようになっていくのでしょうね。
その時にまた、より深みのある作品ができあがっていることを期待しています。

■総合学園ヒューマンアカデミー札幌校『夏の夜の夢』
古典の中でも相当に有名なこの戯曲、とても楽しく見せてもらいました。
果たしてあの長大な物語をどうやって90分にまとめるのか、観る前はそんなことばかり考えていました。
独特のセリフ回しの方法、最初は違和感があり、これは早回しで進むのだろうか・・・と感じていましたが、なぜか逆にそのリズムがとてもなじんで、むしろ心地よささえ感じました。(笑)
元の物語を知っていても違和感のない再構成、展開はとても面白かった。
歌もダンスも非常に難しいレベルを目指しているのだと感じるものばかりで、出演者の努力は相当なものだと思いました。
気になったのは、ミュージカル好きの僕からすると、古典なのかエンターテイメントなのかを判断しかねるテイストなのが惜しまれる部分でした。
個人的に、壁役(観ていないとわからないですよね。笑)の方が、大好きでした。個性を活かして、自分たちの作品にしている部分が大半を占めていただけに、端々に見える作品の難しさにくらいついている部分がもったいないと感じました。
個々の役者さんたちの中には、これからも札幌で演劇を続ける方もいらっしゃると思います。どこかの舞台でまた見られることを楽しみにしています。


■総合芸術ユニット えん『紡人-つむぎびと-』

難しい作品だな、という印象がまず残っています。
人間の業、その中で翻弄される純粋さ、目指すものの壮大さを感じました。
欲を言えば、もっとスマートに、しかし醜く描いて欲しかったと感じます。
舞台は虚構の世界とよく言われます。だからこそ、出来ることも、逆に出来ないこともあります。
しかし、隙なく組み立てられた世界観は、その1時間や2時間を完全に「現実」として認識させるだけの力があると思っています。
今回のような、「少し現実と違う」世界は一番難しいと感じていて、でもハマると入り込ませやすい世界だとも思うのです。
そのための要因は沢山あるでしょう。舞台装置であったり、衣装や立ち振る舞い、もしくは演技や演出効果かもしれません。
この作品を観ていて、どうも一歩ずつ足りていない印象を持ちました。
ただ、出演者個人の持つ雰囲気には引き込まれる部分も多くあり、もっと演出として引き出してそれを集約した作品になっていると、完全な作品世界に引き込まれるようになっていたのではないかと惜しまれます。
個人的には、衣裳と言葉に引っかかる部分があり、世界に入り込むのにストップがかかってしまうのがもったいないと感じました。

今の方向、世界観をもっと突き詰めて、ストイックに作品に向かっていくと圧倒的な力をもつ劇団になるのかなと思います。今後のより一層の活動に期待しています。

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