SAPPORO ART STAGE 2016



TGR札幌劇場際 NEWS


TGR札幌劇場祭2016 講評⑤

TGR札幌劇場祭2016、講評5回目は大賞の審査員の中脇まりやさんです。
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【プロフィール】
札幌生まれ、札幌育ち。
一般社団法人AISプランニングスタッフとしてコミュニティ&レンタルスペース「オノベカ」の運営や企画を担当している。
小学生の頃以来見ていなかった演劇を見るようになったのはここ2,3年。

【講 評】
準備期間も含め、TGR2016に関わったみなさま、本当にお疲れ様でした。
「そもそも演劇ってなんだろう?」
という疑問から始まり、
「どうして札幌で演劇を続けるんだろう?」
「演劇はひとたび始めたら取りつかれてしまうものなんだろうか」
「いい演劇ってなんだろう?」
ぐるぐるぐるぐると頭の中をいろいろな考えが駆け回った一ヶ月。
その余韻に浸りつつ、早くも一ヶ月が経過しようとしている時点です。

演劇について書かれた書籍やサイトを見るようになったり、
東京に行ったついでに劇場に足を運ぶようになったりと、
TGR審査員の機会は私に新たな世界を開かせてくれたと思います。
観劇するスキル(?)も少しだけ上がったような気がします。

「大きなウソを作っている」と、すきな役者さんが話しいて、
ああ、じゃあ観客としての私は「上手にウソをつかれたいんだ」と思った。
とは、公開審査会でお話したことです。
つい2年ほど前に演劇を見始めたばかりで、もちろん演劇をつくる側に立ったことはありません。
評価をするという基準で観劇をしたことすらありませんでした。
評価する項目というものが、あげるとキリがないことに気が付きました。
演技力、衣装、美術、照明、音響、ときどきにおい。わたしが今まで見えていたのはこの点です。
審査員になってみて見えてきたものは、脚本のよしあし、役者さんの身体性、それらすべてのバランス、
役者さん同士のバランス、トータルしての演出。
きっともっともっとあるのでしょう。
(ちなみに残念ですが、未だに脚本の良し悪しはまったくわかりません。)
以上を踏まえて、じゃあ上手なウソはなんだろう、と考えたところ、
・脚本/演出/役者さん等さまざまな事項に一本筋が通っていること(=ウソに矛盾がないこと)
もしくは、
・これってウソじゃないかと思わせる余地もなく、ウソを勢いで貫かれてしまうこと
このどちらかなのかな、と思いはじめました。
でも、一本筋を通ったウソが本当に一本筋を通っているかというと、
そうでもないようで、例えば哀しいときに暗い音楽があれば哀しいかというと、
実は明るい音楽があったほうが哀しみが浮き立つということもあるようで、
ウソのつきかたにも、きっといろいろあるんだなと思っています。
(ちなみに音楽の話は井上ひさしさんの『演劇ってなんだろう?』からの受け売りです…。)
人の気も知らないで、と思われるのは重々承知で、色々と考えたり、お話をさせていただいていました。

以下、事前審査会で選んだ5作品について、主に述べさせていただきます。

・劇団コヨーテ「身毒丸」
わたしは寺山さんの生きていた時代を知りません。なんだか摩訶不思議な世界。
寺山作品はおそらく小六の時に一度(風蝕異人街)、そして昨年の「奴婢一般に関する総則」(万有引力)、
あとは書籍と映画、時々NHKでやっているドキュメンタリーで見る程度。
未知なものだから、どんな世界観が広がっているのか、好奇心と恐怖心と、少しの警戒心をもって、寺山作品を見てきたように思います。
今回も例外ではなく、少し身構えて劇場に足を運びました。
黒幕が降り、学生服が並び、卒塔婆が立つ、小出しにされる小道具、老若男女を飛び越えての一人芝居、
今まで思い描いていた寺山作品とは違うような、驚きが、衝撃がありました。
ただ、録音のノイズ感はわざとだったのでしょうか。気になりました。
かつらを脱いだり着けたりしている亀井さんは、どこかそれを楽しんでいるように見えましたし、
身体から声が発散される心地よさを感じました。
(計らずもジョアを頂いてしまいました。)

・劇団アトリエ「蓑虫の動悸」
こんなに静かな舞台は見たことがありませんでした。
抽象的な舞台のように見えました。
役者さんたちの身体の張り具合にも驚きました。
服(蓑?心の殻?)を着ていれば見えないものも、
それを脱げばあらわになる奥底の苦悶、欲望、憎悪。
見えないものを可視化していたように見えました。

・ELEVEN NINES presents ギャルソンモンケ「乙女の祈り」
会場の観客に流されて面白くなくても笑うのはやめよう、
と思って見ていましたが、笑かされました。
TGR期間中、久しぶりの喜劇でうれしかったです。
女優さん方の振り切れ方がもう、痛快でした。
思う存分に笑わせていただいたのですが、何を伝えたかったんだろう?と思うとわからず、
作品どうこうではなく、一観客として、喜劇の見方とは…と疑問を持ちました。

・青年団リンク ホエイ「珈琲法要」
最初の津軽弁レクチャーがまたよかったですね。
舞台の上はいたって素朴。あたたかな日本語。
今まで学校の授業でも、「アイヌが…、和人が…」と聞いてきましたが、あまりピンとこない。
やっとこの舞台を見て、アイヌや和人が近くになった、と思いました。
他民族が自分の土地にやってくること、
土地勘もない、しかも環境の整わない土地に投げ出されること、
仲間が死んでいくこと。
北海道に住む人に見てほしいと思いました。
珈琲の登場はいきなりではありましたが、
薬として最初に飲まれた様子を想像するのは面白いですね。

・NPO法人コンカリーニョ「ちゃっかり八兵衛」
コンカリーニョは毎回来るたびに客席の形がくるくる変わって、
今日はどんなところからどんなふうに舞台を見るのだろうかと、それもまた一つの楽しみだったりします。
初めての座敷席。落ち着きのないわたしはいろんな態勢で座りなおしながら、リラックスして楽しめました。
終わっていざ立ち上がろうとすると、隣の方の座布団に少々お邪魔している、
隣のお客さんとの境界線の曖昧さにまた、味わいを感じました。
お芝居には存分に笑わせていただきました。
あの役、次出てきたら何言ってくれるかな、
あの役者さん、次は何役だろう、
次から次へと餌(?)を拾っていくような気分でした。
脚本のことがよくわからない私でも、最後はすっきりと「合点!」。

演劇にどっぷりと浸る一ヶ月間を、どうもありがとうございました。
来年もまた、様々な作品に出会えることを楽しみにしています。
あん

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