SAPPORO ART STAGE 2016



TGR札幌劇場際 NEWS


TGR札幌劇場祭2016 講評④

TGR札幌劇場祭2016、講評4回目は今回から新人賞の審査に加わっていただいた布施茜さんです。
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【プロフィール】
札幌市こども人形劇場こぐま座で勤務後、現在は職場の異動のため児童会館にて勤務。音楽や芸術が好きで、合唱団に所属しているほか、休みの日にはコンサートや美術館に行ったりして過ごしている。数年前からやまびこ座にて人形浄瑠璃にも挑戦中。

【講 評】 
 TGRに参加された劇団の皆様、そして審査員含め関係者の皆様、本当にお疲れさまでした。今回初めて新人審査員を引き受けさせていただきました布施と申します。他の審査員の皆様とは違い、全くの演劇初心者の私が審査員なんて勤まるだろうかと、不安と緊張で劇場に足を運びました。でも観劇中緊張や不安は全く忘れ、ただただ演劇の楽しさ・魅力に引き込まれてしまったんです。演劇って本当に面白いですね。こんなにも多様な作品があって、そのどれもが似てはいなくて個性を放っている。その分、審査は何を見たらいいのだろうと頭を抱えましたが。私が大切にした点は「観劇後も心に残る作品であるか」どうかです。世界観、メッセージ性、楽しかった高揚感、全てひっくるめて心に深くささった作品を選ばせて頂きました。長く演劇の経験を持っていらっしゃる方々とは違う、演劇初心者として一番観客に近い目線でいられることが私の強みと信じ、率直に感じたことを以下の講評に書かせていただきましたが、こんな風に感じる人もいるんだなという程度に読んでいただければ幸いです。

1.劇団plus+「NAMARA」
 登場するキャラクター一人一人が個性的で味があり、たいへん笑わせていただきました。個性の強いキャラクターばかりではありましたが、不思議と声のトーンや雰囲気に違和感もなく、物語の中にもしっかり溶け込んでいたと思います。独特な物語の設定も、個人的にはとても面白いと思うのですが、もっと細部まで描かれるとよりリアリティが出てきて見る側も作品の世界観に入り込めるのかなぁと感じました。

2.さっぽろ学生演劇祭「桜田四姉妹、婚活をする。」
 観客と一体になって楽しめる作品だなという印象を受けました。他の会場に比べると、広いホールではありましたが、後ろの席にいても演者のエネルギーがつたわってきました。女装にも笑わせていただいたのですが、どうしても「モテない女」ではなく「女装」としてしか見れなかったのはキャラクター作りの難しいところなのだろうなぁと思います。

3.劇団・木製ボイジャー14号「拝啓 臆病者共」  
 劇場に入った途端に空気が変わるような、インパクトのあるセットで、スッと世界観に入り込めました。張りつめた緊張感の中、登場人物それぞれの内面を受けとめようと必死に観劇した前半パート、そしてがらりと変わって後半。さまざまなメッセージが、心に突き刺さり、観劇後もしばらく考え込んでしまいました。目の前で生身の人が演じる力を一番感じた作品でした。

4.演劇ユニット カラフルホリデー「ムーンライト ラズベリー」
 まるで1本の映画を見ているかのように、綺麗にまとまった作品だったと思います。さまざまな過去や想いを抱えた登場人物たちが物語の中でしっかり絡んでいて、皆が物語で重要な役割を担っているように感じました。作中で描かれなかった1コマ1コマを想像したくなるような、観劇後も余韻に浸ってしまうような作品で、誰かと見に来て作品について語りたかったなぁと後悔しました。

5.劇団ひまわり SPクラス「おいてけ堀のはげちゃびん」
 独特の世界観・キャラクターは個人的にはとても好みなのですが、少々無機質な感じがしました。演者ひとりひとりがその役について解釈を深めると、他の登場人物との絡み方や台詞の使い方も変わってきてより引き込まれる芝居になるのではと感じました。

6.総合学園ヒューマンアカデミー札幌校「真夏の夜の夢」
 今回観た作品の中で一番楽しく、笑った作品です。台詞回しなどは古典的ですが、テンポが良く子供から大人まで楽しめる親しみやすい作品だったのではないかなと感じました。ただやはり、歌を入れるならより子音を立てたり声を遠くへ飛ばす発声になるといいなぁと思います。聞き取れない個所が何度かあってもったいなかったので。

7.総合芸術ユニット えん「紡人‐つむぎびと‐」
 鬼というかたちで人間の愛憎を描いたテーマはとても好きで、日本の古典には不可欠のひとの脆くて愛しい部分だと思うのですが、時代背景がわかりづらく、違和感を覚える部分がいくつかあったために十分に作品に入り込めなかったのが残念でした。ですが後半のスリリングな展開はハラハラしながら夢中で観劇しておりました。

 新人審査員として、本当に多種多様な作品を観させていただき、充実していた1ヶ月。全くの演劇初心者の私ですが、時には世界観に飲まれメッセージを一身に受け取り、時には舞台と観客が一体となって笑いあい、観劇後も余韻に浸り想いを馳せておりました。映画や小説を観るのとは全く違うこの楽しさは、生身の人間が目の前で演じるエネルギーを感じられる演劇の一番の魅力だと思います。色んなテイストをもった劇団が、その劇団にしかできない作品をこれからも創り上げてくれること、そして私のように演劇の魅力に気付く人が1人でも増えることを願っております。みなさま、本当にお疲れさまでした。

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