SAPPORO ART STAGE 2016



TGR札幌劇場際 NEWS


TGR札幌劇場祭2016 講評②

TGR札幌劇場祭2016、講評2回目は、新人賞の審査員を務めていただいた桑田信治さんです。昨年に引き続き新人賞の審査員は2年目となります。
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【プロフィール】
初めて札幌演劇に触れたのは10数年前。その後、雑誌編集の仕事を通じて札幌の若手演劇人と交流を持つようになり、毎週末の小劇場通いが始まる。ジャンルや規模の大小を問わず、年間観劇本数は100本前後。仕事柄、作品の中身だけではなく情宣のデザインやライティング(文章)などにも拘りはあるが、客席では単純に泣いたり笑ったり。演劇は客席の自分と舞台との「個人的な出逢い」であり、いつまでも「ただの観客のひとり」として札幌演劇を観ていたいと思っています。

【講 評】
まずは参加された団体の皆さんに感謝を。素敵な作品をありがとうございました。
昨年より2団体増えて7団体がエントリー。数が増えただけではなく、今年は全体的に安定したレベルを感じた、というのが僕の、そして審査委員皆の一致した全体感でした。それぞれに独自の志を持った作品を観せて頂きました。
年々右肩上がりにレベルがあがってきている、という言い方ができるかどうかは別ですが、「TGRの新人賞」という目標に対するモチベーションは、回を重ねるごとに高まってきているのを感じます。これは僕個人の意見ですが、大賞より新人賞の方がいま現在はずっとシンプルに「賞を欲する」モチベーションが高い賞なんじゃないかな、とさえ思います。そこがこの新人カテゴリの素敵なところであり、今後は新人賞→大賞というステップの間に、若手演劇人の目標となる何らかの賞があってもいいんじゃないかと、「客席側」の僕としては考えます。(運営の方々のご苦労を考えると、賞をひとつ増やすのも大変なのでしょうが。。)

若手・新人と言われるカンパニーの作品を多く拝見していて、僕は最近「もう、好きなように作って、見せてくれればいい」というような感覚になってきています。「これは特定の客層にしか届かない内容」とか「若者向けに過ぎる」とか、そんな事はどうでもよくなってきていまして。
ただし、これは若手団体全体にいえる事ですが、同年代で作品を作っていく中で「演出の役割・責任」をもっと重要視していかなければいけないのでは、と強く感じます。作家が作ったモノを客席にきちんと届けるのが演出の仕事。特に作・演出が同一の場合はなおさら、台本を書き上げただけで満足せず、そこからもう一度ホンを解体していく位の気概で「演出」という作業と向き合って欲しいと思います。
以下、僭越ながら各作品についていつものようにコメントさせて頂きます。
(個人的感想として、★★★による評価も付記させて頂いています。)

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■劇団plus+『NAMARA』
勢いの良さ、を感じました。どうせならもっと勢いで押し切ってもよかったかなと。
背景設定などの粗さはまだまだ。あそこの土地でああいう国家の暗躍が起きる必然性や、スーパーのオーナーの設定など、話の本筋ではないとはいえもう少し緻密な骨格が欲しかったです。もしくは(逆に)設定の粗さを瑣末な事として吹き飛ばしてしまうほどの勢いで押し切るとか。
主役のサクラコの表情が後半変わっていくのがいいなと思いました。が、全体としては各々の人物がまだその場の感情表現に終始してしまっているよう。先へと興味を持てないと、観ている側としては「会話」に疲れてきてしまいます。その場の感情表現だけではなく、各々の人物が各々の「想い」を最初から持っているからこそ話が収束していくはず。

個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
方向性(勢い)★★ (僕は旗揚げ公演も拝見しているので、そこからの「見せる作品」を作る、劇団としての進歩を感じました。)
舞台美術★★☆ 桜の樹の質感が素敵。
笑いのテイスト★★ 劇団の持ち味に育っていくかも。ただしもっとタイトに進めた方がいいかなと思う場面も。

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■さっぽろ学生演劇祭『桜田四姉妹、婚活をする。』
「幅広い年代の方に学生演劇の公演を知ってもらう」という合同祭の主旨のひとつからすると、今年の作品はその意義を体現する非常によい公演だったと思います。観客を限定しない楽しさ。客席のご年配の方もとても楽しんでいたので「合同祭」としては大成功だったのではないかと。
片側で、「女装すればそれだけで笑いはとれる」のですが、その笑いを越えた何かが、どこかに欲しかったです。演劇を見慣れている人には物足りない面もあったのでは。話を難しくする必要はないと思いますが、例えばどこかに、ちょっとだけ「深み」が欲しかったかなと。
(余談ですが、長女(男優)は「ブス」ってことになってたけど、かなり美人さんだと思いました。)

個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
笑い★☆ テンポのユルさはわざとなのかな。もう1段ギアをあげてほしかった。
エンタメ度★★☆ 安心して楽しめる点は評価。そして、ユルくても笑わされる久保さんには感心。
舞台美術★☆ 一幕舞台だが、リビングの壁に何もない(壁しかない)のが淋しくなかったですか。

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■劇団・木製ボイジャー14号『拝啓 臆病者共』
「新人賞エントリー」に対する気合い、意気込みを感じる作品。僕的には「戦略」もあったのかなと思います。が、それもまたアリだと思います。
ボイジャーさんは既にかなりの場数を踏んでいるメンバー・スタッフ揃いで、劇団独自のスタンスがあり、公演毎に違う試みや独自の考えがあるのだと思いますが、ならば「TGRでの芝居」というアプローチがあってもいいのだろうとは思っていました。「賞を穫る作品」を作れる、というのも劇団の力です。
この作品には、演出や展開など、審査委員の方々から色々な意見が出ました(「こういう展開じゃなくて」「こういう構成じゃなくて」などなど)。僕的に不満だったのはエンディングの演出。しかしそれらは「ダメ」ではなくて、このように活発な意見交換が生まれること自体が、この作品を評価しているということの現われ、というようなレベルでの話し合いであり、結果として今年の新人賞となりました。
孤独を越えて生きるエネルギー、というストレートなメッセージにも個人的に討たれました。(タイトルを見た時点でわかっちゃう部分はちょっと残念でしたが)。

個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
脚本★★☆ 鎌塚さんのホンとしては、持ち味の温かさ・柔らかさとはまた別の面を見せていただきました。
個々の人物★★☆ 役者のレベルは高い。ただし、それだけに芝居のトーンの多様性がもっと欲しかった。
構成★★ 第1幕終わりの期待感が高かっただけに、第2幕の必然性に個人的には疑問。

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■演劇ユニットカラフルホリデー 『ムーンライト ラズベリー』
得票的には2位に終わりましたが、審査委員の間で評価の高かった作品。背伸びをしない作品の確かさ、物語づくり(脚本)の丁寧さ、芸達者な客演を脇に配しての人物の描き方、絡ませ方も好評価でした。(森さんもいつもと違うたたずまいに驚きも。)
「天使モノ」はありがちではありますが、これは僕の好き系の話でした。ヨシダレオさんのツカミの上手さですっと物語に入れたのもよかった。
物語の内容として、どうしても全体におとなしくなってしまう。本来そういう話ではあるんだけど、それじゃあそこをどう見せていくか。個人的な感想としては、後半に物語が加速する部分、そしてエンディング、という緩急の精度をもっとあげられれば、と感じました。役者の立ち位置、暗転や音出しなど、演出の精度自体をもっと上げていって欲しい。色々な意味で、まだまだ進化の余地ありです。

個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
物語性★★☆ 構成の緻密さ。人物の描き方にも好感。
演出★☆ 脚本を活かすために、静と動をもっと緻密に演出できれば。
役者★★ キャスティングのよさ。(しかし、演出はまだまだ役者を生かせたはず。)

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■劇団ひまわりSPクラス『おいてけ堀のはげちゃびん』
清水さんの脚本ですが、ホンに手を入れ、演出も道具もすべてクラスのメンバーの手で作り上げた作品だと聞いていますので、そういう観点で話をします。
僕にはとても観易くて、清冽さや民話的な要素も好きな作品でした。奇麗なだけで終わるのかなと思われた後半の展開あたりからは、「人間の業(ごう)」をもう少し表現してほしかったかな、と思います(演出の濃度ですかね)。
あと、役者が完全にハケないで待機しているのは客席の関係者へのサービスでもあるかと思うのですが(笑)、舞台に残り、今、演じている人を見る、という意義もあると思うんですよね。
「見る」のはとても大事です。なぜなら、今1対1で会話している二人以外にも舞台には役者がいるわけなので。ともすれば会話してる相手とのやりとりだけに気が行っちゃうと思うんですけど、横に誰がいるとか、誰が脇からこっちを見てるとか、そういった中で自分はどう思いながらこのセリフを言ってるんだろうとか。そういった部分をもっともっと感じて、演じていってほしいなあと思いました。

個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
脚本★★☆ 物語性の高さは評価(しかし既存本としての評価に近い)
演出★☆ 愉しさの要素、クライマックスなど、もっと確実に場面をの空気感を活かしたい。
役者★☆ しっかりと舞台に生きている役者もいて好感。

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■総合学園ヒューマンアカデミー札幌校『夏の夜の夢』
本来は相当に長いこの戯曲をこの尺で公演するにあたり、どんな風に見せてくれるのかという部分にも非常に興味をもって見ました。
割とオーソドックスに、壮大にはじまったので「大丈夫かな」と思って。これでずっと行くと客層的に結構つらいんじゃないかなと。しかし、前半と後半のテイストの差という問題はありましたが、楽しめるつくりになっていて、しかしその中で設定されたハードルに、キャストの生徒さんたちもよく食いついていって、お芝居や、シェイクスピアになじみのないお客さんにも楽しめる、素敵な卒業公演だったと思います。
個々の役者さんには、華やかさや、セリフの上手さ、笑いや、歌など、それぞれに力量を感じる役者さんも発見。古典戯曲を絵空事にしないで見せるのか、それとも壮大な絵空事として観客を巻き込むのか。そういった面では、テイストの統一感に不満もありました。

個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
エンタメ性★★☆ ハードルの高い作品を、役者の技量を引き出しつつ、観客を楽しませるつくり。
役者(個人)★★★ ハーミア役の生徒さんのセリフのフィット感にかなり驚く。
演出★☆ 卒業公演という客層を考えると仕方がないのかも知れないが、テイストの落差に違和感も。

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■総合芸術ユニット えん『紡人-つむぎびと-』
かなり高いハードルにチャレンジした作品だなと思いました。そこは評価したいです。作者の描きたい世界は充分伝わってくるが、ここにもやはり、演出の「脚本の再構築」の不足を感じました。
「何をやりたいのか」と「観客にどう見えるのか」は、やはり違います。演出がどう作品を作り上げていくべきなのかを、もっと精査すべきであったと思います。例えばヒロインの長ゼリフの中身も気になりました。脚本を物語として読んだ段階ではアリでも、実際に舞台で発した時、そのセリフは生きるのかどうか。(これは作者ではなく演出として精査すべき。また、同年代で構成された団体ならそれは演出だけでなく、役者の側から提案しなければならない時もあると思います。)
世界観を作り出すためには、舞台では一瞬で流れていってしまうようなディティール(所作や時代考証など)も、細部まできっちりと抑えるべき。衣裳も、リアルにこだわるなら着こなし、履き物ひとつをとってもおろそかにできません。

個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
物語性★★ 世界観や話の方向性は好き系。
演出★☆ 村人たちの会話シーンや女性の所作など、もっと精査の必要あり。
ラスト★★ ハッピーエンド(アナザーエンド?)に救われた。

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