SAPPORO ART STAGE 2016



TGR札幌劇場際 NEWS


  • TGR札幌劇場祭2016 講評ラスト

    TGR札幌劇場祭2016、講評ラストはTGRを主催する札幌劇場連絡会会長の藤村智子さんです。
    TGR2016の各劇場の企画を振り返っています。
    judge_fujimura[1]

    【プロフィール】
     札幌市芸術文化財団で主に札幌市教育文化会館の自主事業を担当。その後、北海道文化財団コーディネーターを経て、現在同財団理事。TGR札幌劇場祭審査員を2006年のスタート時から3年間務める。2012年から札幌劇場連絡会々長。他にNPO法人コンカリーニョ理事、公益財団法人北海道演劇財団評議員、公益財団法人札幌市芸術文化財団評議員、札幌演劇シーズン作品選定委員など。

    【講 評】
     TGR札幌劇場祭2016は、11月1日~12月4日迄の34日間、32団体が参加しました。このうち大賞に18団体、新人賞に7団体がエントリーしました。札幌劇場連絡会を構成する10劇場による劇場企画の舞台芸術祭という、全国にも例を見ないスタイルのフェスティバルが11年目という折返しの年を迎えたことは感慨深いものがあります。
     TGR2016の各劇場の企画を振り返ってみたいと思います。

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     シアターZOOは、6プログラムの中から大賞に青年団リンクホエイ「珈琲法要」(東京)が、また特別賞「作品」賞は劇団カチノル「お伽の棺」(韓国・光州広域市)が受賞した。「お伽の棺」は北海道文化財団が光州広域市との10年にわたる交流事業として招聘し、ZOOで公演したものである。ZOOは他に柄本明が率いる東京乾電池「授業」、 地元札幌からは札幌ハムプロジェクト「masterpiece~キミはボクの最高傑作~」、弦巻楽団「裸足で散歩」、新人賞にエントリーした総合芸術ユニットえん「紡人‐つむぎびと」というラインナップ。外国及び東京からプロ劇団を含め3本、地元3本と、目を引くプログラムのようではあるが、何か物足りない。付属劇団札幌座が参加していないのだ。周年記念事業として9月と2017年2月に大きな公演があり、また財団本体の運営体制の改編など様々な要因があったとは思うが、札幌座がTGRで占める存在は大きい。ぜひ来年は札幌座作品の参加を期待したい。 

     コンカリーニョもまた10周年を迎えた。「生活支援型文化施設」というユニークな切り口で地域に根ざした劇場として、またシアターZOOと並んで札幌演劇の拠点劇場として実績を積んできた。その10周年記念事業としてコンカリーニョプロデュース作品「ちゃっかり八兵衛」が特別賞「企画」賞を受賞した。スタッフ、キャストに今札幌で考えられる最強の実力派中堅・若手を揃えて、舞台と客席がまさに一体となった空間を創りあげ、見事に会場を沸かせたが、大賞に一歩届かなかった。しかしあの陣容と劇場空間の創出は、コンカリの10年の歩みを物語るに十分なものがあった。他にRED KING CRAB「カラッポ」、劇団アトリエ「蓑虫の動悸」、新人賞にエントリーした総合学園ヒューマンアカデミー札幌校「真夏の夜の夢」等、計4作品のプログラム。そのうち劇団アトリエ「蓑虫の動悸」が大賞候補5作品に残った。
     
     開設記念でいえばBLOCHも15周年を迎えた。いまやBLOCHは札幌の若手劇団が一度はお世話になる劇場であり、TGR新人賞の多くはこの劇場から輩出されている。今年も劇団・木製ボイジャー14号「拝啓 臆病者共」が新人賞を受賞した。近年のTGRは新人賞を目指す若手劇団の真剣さが目につく。自分たちの現在地を確かめて次へのステップとしたい意欲の現れだろう。他にBLOCHのプログラムは劇団プラス+「NAMARA」、劇団コヨーテ「身毒丸」、東京からうわの空・藤志郎一座「ONE DAY/『Will』」、演劇ユニット カラフルホリデー「ムーンライト ラズベリー」、劇団ひまわりSPクラス「おいてけ堀のはげちゃびん」、劇団ロクデナシ「ビューティフルガーベッジ」というラインナップ。上記7劇団のうち、大賞にエントリーしているコヨーテ、藤志郎一座、ロクデナシ以外の4劇団が新人賞に挑戦している。また賞にエントリーしていないが札幌オーギリング「キングオブオーギリング」がTGRに参加した。

     今年もPATOSは自在な空間を創る劇場の可能性を発揮した。テアトロ・マアルイin風蝕異人街「リア王」、劇団words of hearts「ニュートンの触媒」、in the Box「そう」の3本が大賞エントリーした。3作品ともそれぞれ独自の構成でありながら舞台と客席の敷居が低く、一体感が生まれる作りになっていた。words of hearts「ニュートンの触媒」は大賞候補5作品に残った。受賞には至らなかったが今後の躍進が期待される。賞にエントリーはしていないが世界エイズデー札幌実行委員会が「クリス・アザー・ストーリー」でTGRに参加した。

     こぐま座は国内初の公立人形劇専用劇場として今年40周年を迎えた。周年行事は7月~8月にかけて行われ、人形劇師沢則行氏による野外での巨大人形劇などが話題になった。さて、TGRのプログラムはトランク機械シアター「ねじまきロボットアルファー ~わすれんぼうのつぎはぎ~」が大賞にエントリー、この他にエントリーはしていないが人形劇団ありんこが人形劇「たのきゅう」「みんなでやろう人形劇」等で、TGRに参加した。トランク機械シアターは今年も良い作品を発表し、オーディエンス賞のうちホームラン王となった。劇場が働きかけて、優れた人形劇団のTGR参加を期待したい。

     やまびこ座は劇団ルート1「私に最期のさよならを」、新芸能集団乱拍子「いっすんさきは夢」の2本が大賞にエントリー、「第45回札幌人形劇祭」がエントリーはしていないがTGRに参加した。エントリー作品のうち、新芸能集団乱拍子が「審査員賞」を受賞し、同時にオーディエンス賞の首位打者賞も受賞した。北海道で、伝統的な民俗芸能を祝祭性豊かに伝えていく努力と技を讃えたい。やまびこ座も多くの人形劇団が活動の拠点としており、人形浄瑠璃「あしり座」の拠点でもある。ぜひ人形劇の醍醐味を味わえる作品を見せてほしい。

     今年は3本のコメディー作品が楽しめた。そのうちの2本がサンピアザ劇場のプログラムであった。ギャルソンモンケ「乙女の祈り」と、さっぽろ学生演劇祭による「桜田四姉妹、婚活をする。」である。大賞にエントリーした「乙女の祈り」は脚本家水谷龍二の作品。「桜田四姉妹・・」は学生演劇祭を構成する大学から本澤貴文の脚本で新人賞にエントリーした。ギャルソンモンケはともすれば3人の女性のドタバタで終始しがちになるのをよく堪えて健闘した。「桜田四姉妹・・」は言って見ればおバカな芝居なのだが、そのバカバカしさに好感が持てた。サンピアザ劇場が学生演劇祭を支援している姿勢は評価したいと思う。学生側はそれに応えてさらなる成長を期待している。
    ちなみに3本の内の残り1本はコンカリーニョ「ちゃっかり八兵衛」で脚本家マキノノゾミの作品である。

     教育文化会館は、北海道二期会のオペラ公演「カヴァレリア・ルスティカーナ」「修道女アンジェリカ」の1企画のみ。賞にはエントリーしていないが、公演は各方面からの高い評価を得ている。演劇、人形劇、オペラとそれぞれ通底するものはありながら異質のジャンルが一堂に会するのがTGRの特徴だが、賞にエントリーした場合にどのような評価方法があるか、その課題が残っている。

     cube gardenは劇団バカdeジャネイロ「笑いの階段vol.7」、札幌放送芸術専門学校タレント総合科「SBAえすびーえー」の2本で、いずれも賞へのエントリーはしていない。
     札幌の芸能・タレントを目指す若手にとってcube gardenは札幌劇場連絡会に加盟する劇場の中で最も近い位置にある劇場と言えるだろう。札幌でその役割は貴重だと思う。

     EVENT SPACE EdiTでは今年参加プログラムはなかったが、多くの劇団にこの空間の活用を試みてほしいと思う。

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     以上、TGR2016の各劇場のプログラム等について概観しました。TGRは1年ごとに振り返りをし、軌道修正を積み重ねて、いつの間にか11年目を迎えていたというのが実感です。見直すべきところはまだまだ尽きず、課題山積ではありますが、劇団の成長を願い、演劇が市民の身近にある、そういう環境をつくりたいという思いは不変です。劇団と劇場が共に手を携えて魅力あるTGRを作り上げていきたいと願っています。

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  • TGR札幌劇場祭2016 講評⑩

    TGR札幌劇場祭2016、講評10回目は審査委員長を務めていただいた岩崎真紀さんです。
    岩﨑さんも審査員3年目のため今年で卒業。おつかれさまでした!
    judge_iwasaki[1]

    【プロフィール】
     広報誌・情報誌などの制作に携わるフリーランスのライター・編集者。ジャンルは問わないが特に農業分野に強い。2006年以降、北海道文化財団主催の演出家養成講座・脚本家養成講座などの業務に関わる。また、来道した演出家・脚本家のインタビュー記事を作成。『ホッカイドウマガジン KAI』でコラム「客席の迷想録〜北海道ステージウオッチング」を連載中。北海道農業ジャーナリストの会所属、絵本・児童文学研究センター正会員。

    【講 評】
    ■大賞候補5作品と審査員賞作品について
     2016年に大賞候補となった5作品は、それぞれに力ある素敵な作品ではありましたが、私という観客にとっては「完全に別の世界に連れて行ってくれる」「見終わった後に長く残るものがある」という点で不足を感じる作品でもありました。そのため、最終投票では大いに悩んだ末に、「もう一度観たいと思うかどうか」という基準で票を投じました。

    ●青年団リンク ホエイ『珈琲法要』
     全体の構成と「珈琲」の登場の仕方に納得のいかないものを感じましたが、北海道の歴史の悲劇という題材や津軽弁の味わい、圧倒的な演技力などに惹きつけられ、再演による作品の完成を観たいと強く感じた作品でした。詳しくは北海道マガジン「カイ」のコラム『客席の迷想録』をお読みください。
    http://kai-hokkaido.com/stage008/

    ●コンカリーニョプロデュース『ちゃっかり八兵衛』
     定評あるコメディを明快かつ遊び心満載に演出、コンカリーニョ10周年企画としての劇場全体の盛り上がりも素晴らしい作品でした。「もう一度観たい」という点では、観た時間の楽しさですっきりと満足するものがあり、『珈琲法要』に及ばないところがありました。私が演劇の一番の楽しみだと考えている「余白を想像する楽しみ」がないタイプの作品だったからかもしれません。

    ●劇団カチノル『お伽の棺』
     戯曲・演出・演技の完成度において、2016年参加作品の中で最も優れていたように思います。しかし私個人としては、「寒村から攫われて娼家で働かされた女」の表現に違和感がありました。加えて「正直であるという口裏合わせで支配者を欺き生き延びる集団」ということを衝撃として表現したラストは、「現代の札幌で生きる私とのリンク」がいささか弱く、また高い完成度ゆえに、変化を観たいという気持ちも薄かったように思います。

    ●劇団アトリエ『蓑虫の動悸』
     若者の対人関係の悩みと孤独のストーリーを身体の動きで表現した作品で、水を張った舞台と照明を効果的に用い、美しく演出されていました。蓑虫の生態への仮託もよい発想と感じました。しかし、身体表現は言語からの置き換えで抽象的というよりは説明的、かつ先の展開がある程度読めたため、上演時間が非常に長く感じられました。男女関係の表現には繰り返しが多く、短く整理すると完成度が高くなるように思いました。

    ●劇団Words of heart『ニュートンの触媒』
     ナイロン発明者という知られざる偉人に光を当てた作品で、派手さはありませんが人間の物語を真面目に描こうとする姿勢があり、札幌発のオリジナル戯曲作品の可能性を感じさせてくれました。物語は「かけがえのない、最も憎むべき〜」と言う友人の回想の形をとっていましたが、最も大事なその回想の動機(愛憎)が弱かった点が惜しまれます。また、交友関係や天才の狂気の表現にも改善すべきと思う点がありましたが、再演による完成を見たいと感じる作品でもありました。

    ●新芸能集団乱拍子 『いっすんさきは夢』
    「いくつもの闇が通りすぎその度に光が来た」を導入に、狂言的に回すフレームの中で見せる聞かせる太鼓を披露、祝祭感が「夢のいま」と「明日には夢が」を感じさせる素敵な構成でした。主力メンバーが要所を決めることで、多様な演者が参加してなお魅力的な舞台として成立していると感じました。

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    ■大賞候補として検討した作品

    ●トランク機械シアター『ねじまきロボットアルファー〜わすれんぼう のつぎはぎ〜』
     子ども向け作品としては例年通り高い完成度でしたが、間合いの速さや要素の多さ(詰め込み)が気になりました。また、脚本も昨年作品のほうが心に響いたように思います。

    ●ELEVEN NINES presentsギャルソンモンケ『乙女の祈り』
     名作脚本の設定・構成を活かしつつ独自の笑いを演出した作品で、ギャグアクションのキレも含め楽しく観劇しました。笑わせながらも共感させる「男への愛」の表現と、ラストで「乙女の祈り」に落ちる演出があれば、心に残る作品になったと思います。

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    ■TGR全体について

     今年は地元札幌勢から、劇団アトリエと劇団Words of heartの2団体が、初めて大賞候補入りしました。これから札幌の演劇シーンの牽引役へと成長してくれることを楽しみにしています。

     賞選考の結果としては、札幌演劇の現在の牽引役であるはずの中堅層が力を示せなかった年でした。初日の時点では「まるで芝居になっていない」と評価された作品、目を引く演出ながら役者の身体・パフォーマンスが緩んでいた作品もあります。初心に返って、真摯に戯曲を読み込み、身体をつくり、また良い舞台を創ってみせてほしいと思います。

     長く札幌演劇を見続けている方々からは、「札幌演劇のレベルは着実に上がっている」という声が聞かれました。私自身も、特に既存の戯曲を用いたものでは、札幌で活動する演出家・俳優によって完成度の高い、安心して観ることができる作品が作られていると感じます。

     一方で、オリジナル戯曲の弱さが目につきました。戯曲を書く方は、ノウハウ本を読んだり、名作戯曲を数多く読んで設計を研究したり、自作について多くの人の意見を聞いてみるなど、今一度、基本的な部分からの勉強が必要であるように思います。

     私は2014年から三年間、審査員としてTGRを楽しませてもらいました。引き受けるときには、任期の長さと観劇本数の多さを負担に思いましたが、終えてみれば、一年目には一年目の新鮮な視点、二年目には二年目の視野の広がりがあり、三年目には札幌演劇全体の様相や個々の劇団・集団の挑戦・成長を感じることができました。三年の任期と観劇本数の多さは、審査システムとして意義のあるものだったと感じています。
     札幌劇場祭のますますの隆盛と、札幌から世界に羽ばたく作品の誕生を、心より願っております。

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  • TGR札幌劇場祭2016 講評⑨

    TGR札幌劇場祭2016、講評9回目は大賞審査員の浅野目輝頼さんです。
    審査員3年目のため今年で卒業。おつかれさまでした!
    judge_asanome[1]

    【プロフィール】
    1976年2月、岩見沢市に演劇鑑賞会を発足させたのち、8年後の1984年7月に脱サラし専従事務局長となる。1988年12月には美唄市にも演劇鑑賞会を発足させ、二市にまたがる鑑賞団体の事務局長を歴任。1991年1月に札幌えんかん(当時・「札幌演劇鑑賞協会」)と組織合併して、札幌の事務局に移籍。その後、「札幌中央演劇鑑賞会」や、本部機能をもつ「協会」の事務局長を歴任したあと、2002年1月に法人格を取得してからは、専務理事・事務局長に就任。
    2014年年5月に「札幌えんかん」を定年退職。
    現在は、(2013年に「岩見沢演劇鑑賞会」が解散したため) 居住地・岩見沢市で再び演劇公演(実行委員会形式による一般公演)を行うため活動中。

    【講 評】
     審査員3年目の今回は最後なのではりきっていたのですが、11月下旬に風邪をこじらせ「肺炎」になってしまいました。大賞エントリーの18作品中あと3作品の観劇を残してドクターストップがかかり、最後まで観劇出来ませんでした。「事前審査会」や「公開審査会」にも出席できず、他の審査員の皆さんには大変ご迷惑をおかけしました。お詫び申し上げます。
     「事前審査会」で絞られた大賞候補5作品と、「公開審査会」で正式に決定した大賞作品・特別賞の合計3作品を後日お聞きしました。観劇した15作品中、私が大賞候補として推薦するつもりだった2作品(「珈琲法要」「お伽の棺」)が、大賞と特別賞に選ばれていたので納得できました。
    大賞に選ばれた青年団リンク・ホエイの「珈琲法要」は、役者たちの実力ある演技、骨太の脚本の素晴らしさ、緊張感ある演出に引き込まれ、大変見応えがありました。劇団カチノルの「お伽の棺」は、扉座の横内謙介版「鶴の恩返し」で、扉座公演を以前観たことがありますが、今回の韓国劇団も期待を裏切ることなく楽しく観劇出来ました。もう一つの特別賞を受賞した「ちゃっかり八兵衛」は、前述の理由で観劇出来なかったのでとても残念でした。
    ほかに大賞候補5作品に選ばれていた劇団アトリエ「蓑虫の動悸」と、劇団words of hearts「ニュートンの触媒」についてひと言。「蓑虫の動悸」は、台詞がほとんどない静かな動きが延々と続きましたが、池を表現した舞台と照明の美しさは見事で、演者の動きも素晴らしかったと思います。ただ上演時間が長く感じられて、途中で集中力が途切れてしまいました。「ニュートンの触媒」は、何といっても脚本がとてもよく書けていたと思いました。展開構成や場面転換、セリフなど、プロの劇作家が書いたのでは…と思わせるものがあります。残念だったのは役者たちです。この本でプロの役者が演じたら素敵な舞台になるでしょう。
     ほかに観ていて安定感があり、今回も健闘していたと思うのは、トランク機械シアター、風蝕異人街、RED KING CRAB、ELEVEN NINES presentsなど。その中でも、TGR審査員になって知ったRED KING CRABは、とても気になる劇団です。作・演出の竹原圭一氏の芝居作りの特徴としては登場人物の設定をしっかり作り込むことのようですが、私は彼のそこに好感を持っていて、応援したい劇団です。今回の「カラッポ」はの台本をみせてもらいましたが、今回は何度も回想シーンがあり、それが劇展開(脚本構成力)として良い方に作用していなかったように思います。回想シーンの整理、セリフの検証を今一度してみてはどうかと思います。
     観劇した15作品すべてについてコメントを記しませんでしたが、ご容赦ください。
    最後に、札幌の演劇人たちの日ごろの活動に敬意を表したいと思います。今後とも札幌の演劇文化の発展のために大いに頑張っていただきたいと思います。

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  • TGR札幌劇場祭2016 講評⑧

    TGR札幌劇場祭2016、講評8回目は新人賞審査員の太田真介さんです。
    judge_ota[1]
    【プロフィール】
    高校時代から演劇を始め、20歳前後を色々な演劇の現場で過ごす。
    10年ほど前に札幌に移住してからは、プラズマニア、COLOREに所属し舞台に立っていたが、近年は出演ではなく各所で制作・裏方をメインに活動。
    2014年にNPO法人コンカリーニョの職員となり、札幌演劇シーズン、札幌劇場祭(TGR)の事務局として制作を担当するほか、幅広い同法人事業のコーディネート・マネージメントを主に担当している。
    同法人で管理運営する、あけぼのアート&コミュニティセンターの事務局長。

    【講 評】
    2016年のTGR期間が終わり、1ヶ月が経ち、参加団体の皆さんは次の公演やそれぞれの生活にむかっていることと思います。
    改めて、約1か月間お疲れ様でした。
    審査員という貴重な機会でみなさんの作品をみることができて本当に感謝しています。
    というのも、劇場の人間として働き始めてからというもの、忙しさにかまけて自分の職場での公演や、近しい人が出演する舞台くらいしか観に行くことがなくなってたのです。こんなに多くの「若手」と呼ばれる方々の舞台を観て、とても多くの事を思い、考えることができました。
    僕も、以前は「出演」側の人間でした。まぁ、今もたまに出演することはありますが、演劇シーズン、TGRはじめ多くの舞台に出演されている第1線の方々にはまるで及びません。ただ、自分の作品を評価されるということは昔も今も緊張します。耳を塞ぎたいくらいです。(笑)
    ですが今回は、講評ということで、思ったことの中からいくつか、みなさんにお伝えしようと思います。良くも悪くも力の籠ったお芝居を見せてもらった、せめてものお礼になればと。

    お芝居は見せるもの。他人の評価は必ずついて回ります。特にTGRはそのための場です。
    そして、これから僕がお伝えすることは100人、200人の観客の中のたった一人の感想です。僕一人の言葉に左右されないで、作品づくりに向かって欲しいと願っています。
    お客様が「面白い」と言ったものは、面白いのです。
    その中で、こんな感想を持つ人がいるんだな、と思って欲しい。自分たちが共感できるなら活かせばいいし、それは違うと信念を持って否定できるなら自分たちの思う道を進めばいい。

    いつか、みなさんの作品を再び観た時に、より心に響く作品になっていて欲しいと願っています。

    前置きが長くなりましたが、新人賞エントリー7作品について、少しずつ講評を。

    ■劇団plus+『NAMARA』
    TGRの最初を飾る作品。会場に入った時にまず目に入る大木、存在感がとてもよかった。会場に入った時に目を奪われる仕掛けは個人的に大好きです。
    新人賞エントリーらしく、勢いを感じる作品でした。ただ、勢いを感じるが、その勢いに持って行かれないのがもったいなかった。一つ一つのシーン、会話、ネタが繋がりきらず、どんどん押し流されていく感覚が途切れてしまう印象でした。
    話の展開に途中で疑問を感じてしまうと、流れに乗れないというか。そこを、強引にでも引っ張る強さ、演出が欲しいところでした。
    お話は必ずしも起承転結でなくとも構わないと僕は思っています。ただ「これが見せたいんだ」という強さが伝わるシーン、最後のヨサコイに持って行くまでの盛り上がりに物足りなさ、ある種の「収まり」を感じました。
    会話が出来ているからこそ面白いネタ、単発のネタ、使い分けがされていくともっと光ると思います。

    ■さっぽろ学生演劇祭『桜田四姉妹、婚活をする。』
    学生演劇祭、10年ぶりくらいに観ました。面白かった。
    当日パンフを読んだ時からわかってしまう、女装ネタ。桑田委員長も言っていましたが、女装だけで終わらないで、もう一段先に踏み込んだネタが観たかった。
    お話は、何のことはない、詐欺の話。憎み切れない詐欺師一家、畳み掛ける怒涛の喋りが良かった。
    ただ、THE・悪役(コミカル)、的な立ち振る舞いに徹した方が突き抜けていてよかったかなと。リアルな悪役ではなく、「それで騙せると思ってんの!?」くらいのテイストで、「それで騙されんの!?」につながると深いことを考えずに観て、面白いのかなと感じました。
    個人的には、音響・照明と舞台装置が寂しかったかと。せっかくのサンピアザ劇場、もう少し作り込むと見栄えが格段に上がると感じました。最初のサス芝居、顔の明かりが切れていたのはわざとなのでしょうか・・・?気持ち的には、僕も身長的にサスから外れてしまいがちなので(笑)共感できますが、そこは入ってて欲しかった!

    ■劇団・木製ボイジャー14号『拝啓臆病者共』
    こちらもBLOCHでの公演、会場に入って最初に目に入るロープと箱イス、印象深かったです。始まる前から作品が見えるような・・・開演が楽しみになります。
    すでに今回の新人賞エントリー団体の中ではベテランの域に入る出演者たち、今回が最後の新人賞のチャンスということで、懸ける想いが感じられました。
    個人的に思うのは、やはり、どうして過去と現在を分けて描いたのか?ということです。
    単純に展開の中に混ぜればいいということではないのですが、独立した2つの話がそれぞれに収束する様がお互いに効果的に見え切らなかったのが惜しまれました。
    この作品「臆病者」として、描かれているのは誰なのか。何のための場なのか。何の救いが訪れたのか。(救い、とは必ずしも「生」じゃなくてもよいと思っています。)演出、演技、舞台装置を総合して、描きたいものが伝わってきたからこそ、どちらか片方(過去と現在)を軸に描く見せ方をして欲しかったなと感じました。
    今後、エントリーするとなると大賞エントリーになっていく団体ですが、もう一歩、圧倒的な世界観、表現を持って挑んできてくれることを期待しています。

    ■演劇ユニットカラフルホリデー 『ムーンライト ラズベリー』
    個人的に、どこか懐かしさを感じる作品でした。僕がお芝居を始めた頃に観た作品に雰囲気が似ていたのかもしれません。
    桑田委員長も言っていましたが、背伸びをしない作品の確かさ、物語の丁寧さが評価されるところかと思います。一人の男が持つ強い想い、それを取り巻く人物たち、そして想いに巻き込まれてラストへ向かっていく流れ。好きな作品でした。
    だからこそ、もっと、全体の中でのボルテージの高まりというか、ラストへ向かって収束するすべての物事で観客を引っ張って行って欲しかったと感じました。
    今回、新人賞の選考の中でも非常に高い評価でしたが、もう一回新人賞にエントリーして、もっと磨き上げられた作品が観たいということで、新人賞には選ばれませんでした。
    話としての持って行き方、観客を引き込む演出、もっと精査する余地はあると感じていますので、次回の挑戦に期待しています。


    ■劇団ひまわりSPクラス『おいてけ堀のはげちゃびん』

    全体として、「しっかりと作られた」作品だと感じました。
    会話、セット、物語、全てが丁寧に作られ、丁寧に見せてくれた。欲を言えば、それが少し物足りなくも感じました。
    妖怪、というか、この世ならざるモノのお話は個人的に好きです。
    だからこそ、綺麗に作られた会話やシーン、気持ちよりは、もっと現実離れしてもいいからぶっちゃけられている方がよかったなと感じてしまいました。
    技術もあるし、会話も出来ている地盤があるからこそ、ブレずにさらに崩して積み上げて欲しかった印象です。「人間」と「そうではないもの」という2つの軸の人物の強さ、人間の持つ決して綺麗ではない感情をぶつけているのが観てみたかったと。
    とはいえ、出演者の多くの方はこれから先、たくさん活躍していく方々だと思っていますので、単純に今後の生活の中で感じる重みや感情を描いていけるようになっていくのでしょうね。
    その時にまた、より深みのある作品ができあがっていることを期待しています。

    ■総合学園ヒューマンアカデミー札幌校『夏の夜の夢』
    古典の中でも相当に有名なこの戯曲、とても楽しく見せてもらいました。
    果たしてあの長大な物語をどうやって90分にまとめるのか、観る前はそんなことばかり考えていました。
    独特のセリフ回しの方法、最初は違和感があり、これは早回しで進むのだろうか・・・と感じていましたが、なぜか逆にそのリズムがとてもなじんで、むしろ心地よささえ感じました。(笑)
    元の物語を知っていても違和感のない再構成、展開はとても面白かった。
    歌もダンスも非常に難しいレベルを目指しているのだと感じるものばかりで、出演者の努力は相当なものだと思いました。
    気になったのは、ミュージカル好きの僕からすると、古典なのかエンターテイメントなのかを判断しかねるテイストなのが惜しまれる部分でした。
    個人的に、壁役(観ていないとわからないですよね。笑)の方が、大好きでした。個性を活かして、自分たちの作品にしている部分が大半を占めていただけに、端々に見える作品の難しさにくらいついている部分がもったいないと感じました。
    個々の役者さんたちの中には、これからも札幌で演劇を続ける方もいらっしゃると思います。どこかの舞台でまた見られることを楽しみにしています。


    ■総合芸術ユニット えん『紡人-つむぎびと-』

    難しい作品だな、という印象がまず残っています。
    人間の業、その中で翻弄される純粋さ、目指すものの壮大さを感じました。
    欲を言えば、もっとスマートに、しかし醜く描いて欲しかったと感じます。
    舞台は虚構の世界とよく言われます。だからこそ、出来ることも、逆に出来ないこともあります。
    しかし、隙なく組み立てられた世界観は、その1時間や2時間を完全に「現実」として認識させるだけの力があると思っています。
    今回のような、「少し現実と違う」世界は一番難しいと感じていて、でもハマると入り込ませやすい世界だとも思うのです。
    そのための要因は沢山あるでしょう。舞台装置であったり、衣装や立ち振る舞い、もしくは演技や演出効果かもしれません。
    この作品を観ていて、どうも一歩ずつ足りていない印象を持ちました。
    ただ、出演者個人の持つ雰囲気には引き込まれる部分も多くあり、もっと演出として引き出してそれを集約した作品になっていると、完全な作品世界に引き込まれるようになっていたのではないかと惜しまれます。
    個人的には、衣裳と言葉に引っかかる部分があり、世界に入り込むのにストップがかかってしまうのがもったいないと感じました。

    今の方向、世界観をもっと突き詰めて、ストイックに作品に向かっていくと圧倒的な力をもつ劇団になるのかなと思います。今後のより一層の活動に期待しています。

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  • TGR札幌劇場祭2016 講評⑦

    TGR札幌劇場祭2016、講評7回目は新人賞審査員の平田修二さんです。
    judge_hirata[1]
    【プロフィール】
    1996年北海道演劇財団設立に参加、事務局長、常勤理事、札幌座プロデューサー、ZOOプロデューサーを歴任後、現在顧問。
    2006年札幌劇場連絡会結成に参加、会長を経て現在顧問。同年からの札幌劇場祭に参画。
    2009年演劇創造都市札幌プロジェクト設立に参加、事務局長を経て現在副代表。2012年からの札幌演劇シーズンに参画。
    北海道教育大学講師。

    【講 評】
    ボクは、TGR札幌劇場祭が始まった頃札幌劇場連絡会会長だったので、全作品を観ていました。正直観ているのがつらかった作品が何本かありました。なので会長を下りてから新人賞エントリー作品は観ていませんでした。今回審査委員ということで久しぶりに観るにあたって、覚悟をしていましたが、見事に裏切られました。どの作品も面白かったです。

     『NAMARA』は、分かりやすいし、登場人物が個性的だったのが良かった。桜子役が魅力的だった。台本があまりにもパターンだったのが難点かな。
     『桜田四姉妹、婚活をする』は、悪びれず分かりやすいのが良さでもあり、弱点でもあったと思う。パパ、孫役が良かった。
     『拝啓 臆病者共』は、表現したいことがきちんとあるのが良かった。しかし、そのことが表に出すぎて、個々の人物の個性を通じて描けてないように思えた。
     『ムーンラズベリー』は、とても好感が持てました。身の丈に応じたテーマをも余分なものなく、ちょうど他愛無く描けていたと思う。良い役者も多かった。ボクの個人的評価はこの作品が一番でいた。
     『おいてけ堀のはげちゃびん』は、とても面白い作品で俳優たちも良かった。しかし、演出や、俳優に「指導」が加わっていて、それは作品の根幹を占めるだけに、新人賞対象としてはどうかなと思った。
     『夏の夜の夢』は、アテネの職人のシーンの描き方を初め、結構難しい作品なのだが、エンターテイメントに仕立て上げ、見事だった。しかし、どうしても学生がやらされている感が残ってしまった。大勢の人が出て、全員がその役になることは難しいですね。
     『紡人-つむぎびと』は、工夫した表現で良かった。本をもう少し練り上げるととても良くなるのではないだろうか。

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  • TGR札幌劇場祭2016 講評⑥

    TGR札幌劇場祭2016、講評6回目は大賞審査員の清野勝規さんです。
    judge_seino[1]
    【プロフィール】
    株式会社 ダブルス チーフプロデューサー。
    株式会社ダブルスに所属し、舞台をはじめとする様々なエンタテインメントの招聘、
    プロモーション、会場運営、チケット販売、イベント企画業務を担当。
    食のステージ「七厘」を舞台に北海道ならではの「うまい!」を堪能する
    食材発掘イベント「七厘百個祭」を主催。

    【講 評】

    TGR2017にエントリーされた劇団のみなさん、
    また、TRGを支えてくださった関係者のみなさん、お疲れさまでございました。
    今回初めてTGRの審査員を務めさせていただきましたが、
    普段は興行視点での観劇が多く、評価基準はいたってシンプル、売れるか、売れないか。
    自分自身の評価はもちろんですが、キャスト力や観客の反応等、舞台の出来以上に大切な要素もあります。
    ですので、今回審査をするにあたっては、評価基準となるものを設けないと審査は難しいと思い、
    自分なりに6項目の評価基準を設け、それぞれ5点満点の合計点評価で各公演を観劇、評価させていただきました。

    評価基準の6項目は、
    面白さ:自分自身の 感想(面白いか、面白くないか)
    観客反応:一緒に観劇されている観劇者の反応
    オススメ度:自分の知人に勧められるかどうか
    ストーリー:ストーリー自体の感想
    演技力:役者さん個人個人の感想
    表現力:脚本と演技、舞台や照明、音楽の使い方などの相対的感想
    です。

    ちなみに最高点は26点、最低点は、、、でした。

    仕事の関係で、
    劇団カチノル「お伽の棺」、in the Box「そう」の2作品を観劇できなかったのが非常に残念でした。

    今回のTGR審査を終えて正直な感想としては、札幌の劇団のみなさん、頑張っているなぁ~、と。
    公演内容については色々意見もありますが、お話作って、稽古して、チケット売って。
    大変な思いをして公演やっているわけですから、ホント頑張っているなぁ~、と。

    演出、脚本、美術、音楽、演技などなど、それぞれのパートがある中で
    ひとつだけ良くても、ひとつだけ欠けても残念なものになってしまう。
    いろいろな要素がそれぞれ影響しあい、連鎖することによって素敵な作品になる。

    TGRでは、審査員として評価させていただきましたが、
    札幌により良い作品、よりすてきな作品が生まれることを切に願っております。

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  • TGR札幌劇場祭2016 講評⑤

    TGR札幌劇場祭2016、講評5回目は大賞の審査員の中脇まりやさんです。
    judge_nakawaki[1]
    【プロフィール】
    札幌生まれ、札幌育ち。
    一般社団法人AISプランニングスタッフとしてコミュニティ&レンタルスペース「オノベカ」の運営や企画を担当している。
    小学生の頃以来見ていなかった演劇を見るようになったのはここ2,3年。

    【講 評】
    準備期間も含め、TGR2016に関わったみなさま、本当にお疲れ様でした。
    「そもそも演劇ってなんだろう?」
    という疑問から始まり、
    「どうして札幌で演劇を続けるんだろう?」
    「演劇はひとたび始めたら取りつかれてしまうものなんだろうか」
    「いい演劇ってなんだろう?」
    ぐるぐるぐるぐると頭の中をいろいろな考えが駆け回った一ヶ月。
    その余韻に浸りつつ、早くも一ヶ月が経過しようとしている時点です。

    演劇について書かれた書籍やサイトを見るようになったり、
    東京に行ったついでに劇場に足を運ぶようになったりと、
    TGR審査員の機会は私に新たな世界を開かせてくれたと思います。
    観劇するスキル(?)も少しだけ上がったような気がします。

    「大きなウソを作っている」と、すきな役者さんが話しいて、
    ああ、じゃあ観客としての私は「上手にウソをつかれたいんだ」と思った。
    とは、公開審査会でお話したことです。
    つい2年ほど前に演劇を見始めたばかりで、もちろん演劇をつくる側に立ったことはありません。
    評価をするという基準で観劇をしたことすらありませんでした。
    評価する項目というものが、あげるとキリがないことに気が付きました。
    演技力、衣装、美術、照明、音響、ときどきにおい。わたしが今まで見えていたのはこの点です。
    審査員になってみて見えてきたものは、脚本のよしあし、役者さんの身体性、それらすべてのバランス、
    役者さん同士のバランス、トータルしての演出。
    きっともっともっとあるのでしょう。
    (ちなみに残念ですが、未だに脚本の良し悪しはまったくわかりません。)
    以上を踏まえて、じゃあ上手なウソはなんだろう、と考えたところ、
    ・脚本/演出/役者さん等さまざまな事項に一本筋が通っていること(=ウソに矛盾がないこと)
    もしくは、
    ・これってウソじゃないかと思わせる余地もなく、ウソを勢いで貫かれてしまうこと
    このどちらかなのかな、と思いはじめました。
    でも、一本筋を通ったウソが本当に一本筋を通っているかというと、
    そうでもないようで、例えば哀しいときに暗い音楽があれば哀しいかというと、
    実は明るい音楽があったほうが哀しみが浮き立つということもあるようで、
    ウソのつきかたにも、きっといろいろあるんだなと思っています。
    (ちなみに音楽の話は井上ひさしさんの『演劇ってなんだろう?』からの受け売りです…。)
    人の気も知らないで、と思われるのは重々承知で、色々と考えたり、お話をさせていただいていました。

    以下、事前審査会で選んだ5作品について、主に述べさせていただきます。

    ・劇団コヨーテ「身毒丸」
    わたしは寺山さんの生きていた時代を知りません。なんだか摩訶不思議な世界。
    寺山作品はおそらく小六の時に一度(風蝕異人街)、そして昨年の「奴婢一般に関する総則」(万有引力)、
    あとは書籍と映画、時々NHKでやっているドキュメンタリーで見る程度。
    未知なものだから、どんな世界観が広がっているのか、好奇心と恐怖心と、少しの警戒心をもって、寺山作品を見てきたように思います。
    今回も例外ではなく、少し身構えて劇場に足を運びました。
    黒幕が降り、学生服が並び、卒塔婆が立つ、小出しにされる小道具、老若男女を飛び越えての一人芝居、
    今まで思い描いていた寺山作品とは違うような、驚きが、衝撃がありました。
    ただ、録音のノイズ感はわざとだったのでしょうか。気になりました。
    かつらを脱いだり着けたりしている亀井さんは、どこかそれを楽しんでいるように見えましたし、
    身体から声が発散される心地よさを感じました。
    (計らずもジョアを頂いてしまいました。)

    ・劇団アトリエ「蓑虫の動悸」
    こんなに静かな舞台は見たことがありませんでした。
    抽象的な舞台のように見えました。
    役者さんたちの身体の張り具合にも驚きました。
    服(蓑?心の殻?)を着ていれば見えないものも、
    それを脱げばあらわになる奥底の苦悶、欲望、憎悪。
    見えないものを可視化していたように見えました。

    ・ELEVEN NINES presents ギャルソンモンケ「乙女の祈り」
    会場の観客に流されて面白くなくても笑うのはやめよう、
    と思って見ていましたが、笑かされました。
    TGR期間中、久しぶりの喜劇でうれしかったです。
    女優さん方の振り切れ方がもう、痛快でした。
    思う存分に笑わせていただいたのですが、何を伝えたかったんだろう?と思うとわからず、
    作品どうこうではなく、一観客として、喜劇の見方とは…と疑問を持ちました。

    ・青年団リンク ホエイ「珈琲法要」
    最初の津軽弁レクチャーがまたよかったですね。
    舞台の上はいたって素朴。あたたかな日本語。
    今まで学校の授業でも、「アイヌが…、和人が…」と聞いてきましたが、あまりピンとこない。
    やっとこの舞台を見て、アイヌや和人が近くになった、と思いました。
    他民族が自分の土地にやってくること、
    土地勘もない、しかも環境の整わない土地に投げ出されること、
    仲間が死んでいくこと。
    北海道に住む人に見てほしいと思いました。
    珈琲の登場はいきなりではありましたが、
    薬として最初に飲まれた様子を想像するのは面白いですね。

    ・NPO法人コンカリーニョ「ちゃっかり八兵衛」
    コンカリーニョは毎回来るたびに客席の形がくるくる変わって、
    今日はどんなところからどんなふうに舞台を見るのだろうかと、それもまた一つの楽しみだったりします。
    初めての座敷席。落ち着きのないわたしはいろんな態勢で座りなおしながら、リラックスして楽しめました。
    終わっていざ立ち上がろうとすると、隣の方の座布団に少々お邪魔している、
    隣のお客さんとの境界線の曖昧さにまた、味わいを感じました。
    お芝居には存分に笑わせていただきました。
    あの役、次出てきたら何言ってくれるかな、
    あの役者さん、次は何役だろう、
    次から次へと餌(?)を拾っていくような気分でした。
    脚本のことがよくわからない私でも、最後はすっきりと「合点!」。

    演劇にどっぷりと浸る一ヶ月間を、どうもありがとうございました。
    来年もまた、様々な作品に出会えることを楽しみにしています。
    あん

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  • TGR札幌劇場祭2016 講評④

    TGR札幌劇場祭2016、講評4回目は今回から新人賞の審査に加わっていただいた布施茜さんです。
    judge_fuse[1]
    【プロフィール】
    札幌市こども人形劇場こぐま座で勤務後、現在は職場の異動のため児童会館にて勤務。音楽や芸術が好きで、合唱団に所属しているほか、休みの日にはコンサートや美術館に行ったりして過ごしている。数年前からやまびこ座にて人形浄瑠璃にも挑戦中。

    【講 評】 
     TGRに参加された劇団の皆様、そして審査員含め関係者の皆様、本当にお疲れさまでした。今回初めて新人審査員を引き受けさせていただきました布施と申します。他の審査員の皆様とは違い、全くの演劇初心者の私が審査員なんて勤まるだろうかと、不安と緊張で劇場に足を運びました。でも観劇中緊張や不安は全く忘れ、ただただ演劇の楽しさ・魅力に引き込まれてしまったんです。演劇って本当に面白いですね。こんなにも多様な作品があって、そのどれもが似てはいなくて個性を放っている。その分、審査は何を見たらいいのだろうと頭を抱えましたが。私が大切にした点は「観劇後も心に残る作品であるか」どうかです。世界観、メッセージ性、楽しかった高揚感、全てひっくるめて心に深くささった作品を選ばせて頂きました。長く演劇の経験を持っていらっしゃる方々とは違う、演劇初心者として一番観客に近い目線でいられることが私の強みと信じ、率直に感じたことを以下の講評に書かせていただきましたが、こんな風に感じる人もいるんだなという程度に読んでいただければ幸いです。

    1.劇団plus+「NAMARA」
     登場するキャラクター一人一人が個性的で味があり、たいへん笑わせていただきました。個性の強いキャラクターばかりではありましたが、不思議と声のトーンや雰囲気に違和感もなく、物語の中にもしっかり溶け込んでいたと思います。独特な物語の設定も、個人的にはとても面白いと思うのですが、もっと細部まで描かれるとよりリアリティが出てきて見る側も作品の世界観に入り込めるのかなぁと感じました。

    2.さっぽろ学生演劇祭「桜田四姉妹、婚活をする。」
     観客と一体になって楽しめる作品だなという印象を受けました。他の会場に比べると、広いホールではありましたが、後ろの席にいても演者のエネルギーがつたわってきました。女装にも笑わせていただいたのですが、どうしても「モテない女」ではなく「女装」としてしか見れなかったのはキャラクター作りの難しいところなのだろうなぁと思います。

    3.劇団・木製ボイジャー14号「拝啓 臆病者共」  
     劇場に入った途端に空気が変わるような、インパクトのあるセットで、スッと世界観に入り込めました。張りつめた緊張感の中、登場人物それぞれの内面を受けとめようと必死に観劇した前半パート、そしてがらりと変わって後半。さまざまなメッセージが、心に突き刺さり、観劇後もしばらく考え込んでしまいました。目の前で生身の人が演じる力を一番感じた作品でした。

    4.演劇ユニット カラフルホリデー「ムーンライト ラズベリー」
     まるで1本の映画を見ているかのように、綺麗にまとまった作品だったと思います。さまざまな過去や想いを抱えた登場人物たちが物語の中でしっかり絡んでいて、皆が物語で重要な役割を担っているように感じました。作中で描かれなかった1コマ1コマを想像したくなるような、観劇後も余韻に浸ってしまうような作品で、誰かと見に来て作品について語りたかったなぁと後悔しました。

    5.劇団ひまわり SPクラス「おいてけ堀のはげちゃびん」
     独特の世界観・キャラクターは個人的にはとても好みなのですが、少々無機質な感じがしました。演者ひとりひとりがその役について解釈を深めると、他の登場人物との絡み方や台詞の使い方も変わってきてより引き込まれる芝居になるのではと感じました。

    6.総合学園ヒューマンアカデミー札幌校「真夏の夜の夢」
     今回観た作品の中で一番楽しく、笑った作品です。台詞回しなどは古典的ですが、テンポが良く子供から大人まで楽しめる親しみやすい作品だったのではないかなと感じました。ただやはり、歌を入れるならより子音を立てたり声を遠くへ飛ばす発声になるといいなぁと思います。聞き取れない個所が何度かあってもったいなかったので。

    7.総合芸術ユニット えん「紡人‐つむぎびと‐」
     鬼というかたちで人間の愛憎を描いたテーマはとても好きで、日本の古典には不可欠のひとの脆くて愛しい部分だと思うのですが、時代背景がわかりづらく、違和感を覚える部分がいくつかあったために十分に作品に入り込めなかったのが残念でした。ですが後半のスリリングな展開はハラハラしながら夢中で観劇しておりました。

     新人審査員として、本当に多種多様な作品を観させていただき、充実していた1ヶ月。全くの演劇初心者の私ですが、時には世界観に飲まれメッセージを一身に受け取り、時には舞台と観客が一体となって笑いあい、観劇後も余韻に浸り想いを馳せておりました。映画や小説を観るのとは全く違うこの楽しさは、生身の人間が目の前で演じるエネルギーを感じられる演劇の一番の魅力だと思います。色んなテイストをもった劇団が、その劇団にしかできない作品をこれからも創り上げてくれること、そして私のように演劇の魅力に気付く人が1人でも増えることを願っております。みなさま、本当にお疲れさまでした。

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  • TGR札幌劇場祭2016 講評③

    TGR札幌劇場祭2016、講評3回目は今回から審査に加わっていただいた北海道テレビ(HTB)の元ドラマ担当プロデューサー・四宮康雅さんです。
    judge_shinomiya[1]
    【プロフィール】
    HTB北海道テレビ勤務のテレビマン。札幌在住歴四半世紀にしてソウルは未だ大阪人。91年に日本テレビから転職。ニュース編集長、大型ドキュメンタリーの制作など一貫して現場に携わり、99年からスペシャルドラマのプロデューサーを9年間担当。文化庁芸術祭賞、日本民間放送連盟賞、ギャラクシー賞など国内外での受賞歴も多い。ファイナリスト入賞作品もある米国際エミー賞では、国際テレビ芸術アカデミーから招聘を受けドラマ部門(TV Movie/Mini Series部門)の審査員を3度務めた。劇作家・演出家の鄭義信作品と故蜷川幸雄演出のシェークスピア劇を敬愛する。最近のマイブームはコンテンポラリーダンスとオペラ。イタリア語個人レッスン中。一般社団法人 放送人の会会員。

    【講 評】
     僕は映像の世界のヒトですが、演劇というものが大好きです。演劇とは舞台と観客との間に立ち現れる一期一会で絶対に再現性のない劇的空間のことだと思っています。一番自由な表現が可能であり、時として時代を挑発し、権力と闘い、人々を煽動してこの世にあらざるべきここではない何処かへ連れて行ってくれる。だからこそ、時間を超える普遍性をより持っているものだといつも思っています。
     初めての大賞の審査員でしたが、二つ感じたことがありました。一つは、僕がプロデューサーを約10年間務めたドラマの勉強のために、いわば嫌々舞台を見始めた頃と比べて、役者も含め芝居のレベルが格段にアップしていて、また劇場側の努力の賜物だと思うのですが、演劇の裾野が広くなったことです。もう一つは、はっきりと言わないと、と思うので半ば辛辣に書きますが、これからも札幌の演劇シーンを牽引しなければならない「中堅」の作品が大賞候補の水準に達していなかったことです。これはオリジナルであればその作品世界の資質、原作ものであれば結果論も含めて演出家の責任の範疇なので残念だったし、唖然としたものもありました。このことはきちんと自覚して欲しいと思います。
     審査のために舞台を見ることは、当然のことですが簡単なことではありませんでした。ですが、僕の観劇論は非常にはっきりとしていて、「まったく説明されることなく理性も情感も圧倒的に彼岸へ根こそぎもっていかれる熱量」、それと「なんだか理解できなくて小屋を出た後も、この気持ちは一体なんなのだろうかと自問し、なんとか腹落ちさせようとするのですが、ずっと心の中に熾火のように残って、ときには僕自身の人生も照射してしまう」、そんな芝居を尊敬しています。言い換えれば、作家性や役者というエゴイズムとお付き合いするのが好きなのです。創作に関わる皆さんにはまったくこの二つの軸しかなくて申し訳ないのですが、これを信じてドラマをつくってきたので、TGRもそうした「ある視点」でいつも観ていたことを予めお知らせしておきます。

     まず、大賞を受賞した、「青年団リンク ホエイ」の『珈琲法要』です。全編津軽弁で語られるテキストの心揺さぶられる美しさ。北海道弁で、こうした劇は成り立つのだろうかと考えながら観ていました。史実に基づいた骨太なオリジナル脚本とシンプルながら巧みな劇構造、ZOOの小劇場空間で人物がわずか三人というどこへ向かうか分からない圧倒的な役者の押し出し力と、作・演出の山田百次の地に足の着いた物語の確からしさには、懐に呑んだ短刀を突きつけられるような緊張感を劇中ずっと感じました。こうした作品作りは北海道ではなかなかないものです。創作する上で演劇と向き合う真摯で誠実な姿勢にも感銘を受けました。大賞候補5作品はいずれも審査員の評価的には拮抗していたと思いますが、もう一度「再演」を観たいという強い気持ちがこの作品を結果的に推したのだと思います。

     特別賞(企画賞)の「NPO法人コンカリーニョ」の『ちゃっかり八兵衛』。マキノノゾミの傑作を、yhsの南参が格の違いを見せる好演出。昨年も、ケラリーノ・サンドロビッチの出世作「室温」で作品賞を受賞しているさすがは実力派です。yhsの個性派プレーヤーである小林エレキの持ち味が生きた受け芝居と、この役のために北九州から参加した榮田佳子(千年王國)のさすがな押し芝居で、粋でいなせな江戸時代の風情を絶妙に醸し出し、その均整のとれた劇の背中を芸達者な札幌の演劇人達が縦横無尽に舞台狭しと暴れ回るエンターテインメント大作。コンカリーニョの生みの親であり、育ての母でもある斎藤ちず(初演では演出)のプロデュースワークも光り、コンカリーニョ満10歳祝いもあって劇場を挙げての祝祭空間を生み出していました。観終わってスカッとしました。でも、お祭り騒ぎ以上の劇の高揚感は僕には長く続きませんでした。ですが、現在札幌で僕たちが観ることのできる制作力の結集、頂点の一作といっても過言ではないでしょう。この芝居を札幌の演劇人たちが作れることをとても誇りに思いました。

     もう一つの特別賞(作品賞)を受賞した「劇団カチノル」の『お伽の棺』。個人的には、この作品が大賞を獲ってもおかしくないと思うほど、韓国の演劇人たちの劇的熱量と最後まで途切れることのないサスペンスに満ちた暗く陰湿な寓話でした。もともとは扉座の座付き作家である横内謙介が木下順二の「夕鶴」に触発されて書いた横内版「鶴の恩返し」ですが、韓国の劇団が鶴を異人の女と解釈した横内戯曲を札幌で演じることで、同一性の圧力が強まり、多様なものを排斥する危ういポピュリズムが台頭している不寛容な現在社会を見事に撃ってみせました。一昨年の大賞受賞作「アイランド」もそうですが、韓国劇団と俳優のレベルの高さには驚かされます。劇団カチノルがある光州広域市は、国を挙げて国際的な文化芸術都市としての発信に力を入れているそうです。札幌も負けていられないですね。

     大賞候補作に挙った「劇団アトリエ」の『蓑虫の動悸』。とにかく上演時間が長すぎました。作家のエゴイズムに付き合うのはやぶさかではないのですが、さすがに集中力が切れました。多分、芝居ではなくコンテンポラリーダンスのようなことがやりたくて、本人はコレオグラファーになりきって台詞を事実上消してしまったのだと思います。だから、このくらいの尺は必要なんだよと言わんばかりです。雄と雌の交尾や雌の奪い合い、また雌同士で生殖器を潰しあう陰惨な生存競争も描かれていて、「孤独」というモチーフはきちんと回収されていました。水を張った舞台と照明の美しさは特筆すべきものがありましたし、何より役者の頑張りに拍手です。きっと稽古でそうとう痩せたのではないでしょうか。良くも悪くも小佐部明広の非凡さを感じた作品でした。

     同じく大賞候補作となった「劇団words of hearts」の『ニュートンの触媒』。一般の人は多分知らない、世界初となる合成繊維ナイロン99の発明者、ウォーレス・カロザースをモデルにした作品です。僕は本がとてもよく書けていると高く評価します。映画もドラマもそうですが、一に本、二に本とどこまで行っても「本」が一番大切なのは言うまでもありません。大回想の形をとって物語は描かれるのですが、横に長く建て込んだ舞台美術と人物の動かし方、場転や時間軸の省略も実に巧みです。カロザースが次第に精神を病んでいく経過に葛藤がなくいきなり自殺に飛びついている点や同僚のハーミーズの描き方の整合性のなさなど直す点はあるのですが、町田誠也の本でプロの役者が演じたら化ける面白さが十分にあると思います。

     以下、公演日順から。文章量の多寡は評価を反映していませんので、その点ご海容下さい。

     「トランク機械シアター」の『ねじまきロボットアルファー〜わすれんぼうの つぎはぎ』。昨年のTGR審査員賞受賞に相応しい、実に温かい眼差しで世界の在り様を人形劇で描く力量は大したものです。人物の造形もそうですが、単純に善と悪というステレオタイプな寄せ方をしないところも好感しました。

     「テアトロ•マアルイ in 風蝕異人街」の『リア王』。もう三木美智代の凄みのあるリアを観るだけでお腹一杯。ただ、SCOTの鈴木忠志版「リア王」を上演台本としたせいでしょうか、リアの三人の娘で一番劇的に描かれるべき三女のコーディーリアの省略ぶりは全く腑に落ちませんでしたし、忠臣グロースター伯爵の息子たちも弟の悪魔ぶりに芝居全体が振り回されている感じがあって、そもそも娘の愛情を天秤にかけるという自業自得な傲慢さから始まるリアの転落と救いのない絶望へ劇が焦点を結ばなかったのではないかと思います。

     「札幌ハムプロジェクト」の『masterpiece〜キミはボクの最高傑作〜』。札幌座のディレクターも務めるすがの公は、「カラクリヌード」でもそうでしたが、SFの設定やロボットというブレードランナー的世界が好きなのでしょうか。モチーフらしき具材をごった煮にしたようなお芝居で、結局は精神的に(あるいは性的にも)未発達な少年が酷いイジメを受けている話にしか思えません。すがのは役者としては抜群の存在感を示すし、海外戯曲の読解力も高いはずなのに、どこへ向かってシェイプアップしたのでしょうか。オリジナルの再演でこの上がりではとても実力発揮とは言えず残念でした。

     「RED KING CRAB」の『カラッポ』。多分、作・演出の竹原圭一は、かなり細かく人物の裏設定を作り込んでいただろうと思います。でも、どの人物にも造形が落ちていないと感じました。どこか離島らしきところで、地元の若者がいつも集っているバーのような場所があって、主人公が都会から挫折を抱えて帰ってくる。父親のように慕っていたバーのマスターは認知症を発症して、やがて一人で暮らすことすらままならなくなっていく。そんなお話でしょうか。観客として説明して欲しいわけではないのですが、誰かに感情移入できるフックがなく、やはり本の出来が良くありません。ラストシーンは力業でかろうじて締まったと思いますが、かなりの頻度で入る回想が影絵で示される演出はとても辛かったです。結局説明台詞となっていて、劇における「回想」の扱いの難しさを改めて感じました。

     「劇団コヨーテ」の『カメイケン3つの独演会 monologue+dialogue その3 身毒丸』。札幌の演劇シーンの中で独特の立ち位置を築きつつある(つまり中堅の仲間入りという意味でもありますが)亀井健が、カタカナネームで演じる一人芝居。今回は世界的な評価を得つつある開幕ペナントレースの村井雄を演出に迎えて、満を持して寺山修司・岸田理生コンビの代表戯曲で、蜷川幸雄版舞台で世に広く知られる「身毒丸」に挑みました。否が応にも期待が高まりましたが、二人のケミストリーは起こりませんでした。まず、亀井が「身毒丸」のどこを劇として切り出したいのか芯が見えませんでしたし、モチーフの書き込みも明らかに多牌でした。「母さん、僕をもう一度妊娠して下さい」という劇の核心とも言うべき台詞が響かなかったのは脚色としても演技としても力不足でした。審査員の中には美術や照明を評価する声もありましたが、僕は村井の演出の爪痕をほとんど感じることができませんでした。でも、「身毒丸」に単身で切り込んだ心意気は大いに買いたいと思います。

     「弦巻楽団」の『裸足で散歩』。すがの公と同じく札幌座のディレクターを務める弦巻啓太は、今回はニール・サイモンの初期の傑作「裸足で散歩」を、青井陽治の新訳で上演するという力の入り様でした。もともとウェルメイドのコメディには定評のある弦巻なので、とても期待していた方も多いと思います。僕もそうでしたが、芝居は仕上がっていませんでした(少なくとも僕が観た初日は)。力量を含めた役者のアンバランス感や間合いがしっくりせず、青井新訳でより感じられたであろうウイットに富んだ台詞の応酬の妙も十分に引き出したとは言えません。弁護士になりたてのポールと新妻コリーという将来を夢見る若いニューヨーカーカップルをチャーミングに描き切れませんでした。芝居は初日、中日、楽と3回観ろとよく言われます。もちろん、公演中にも演出のダメだしはあって、芝居は変わっていくものであることは十分承知しています。ですが、このくらい気合いの入ったの「力作」であれば、ゲネプロの段階で仕上がっていないと、最終的な責任はやはり演出家にあると僕は思います。弦巻が懸命に演出の手を繰り出しているのは感じましたが、作品として気持ち良いところにたどり着かなかった印象がありました。

     「うわの空・藤志郎一座」の『ONE DAY/WILL』。 藤志郎一座を「演劇」として観るかどうかは好みの分かれるところでしょう。彼らに失礼かも知れませんが、「お笑いライブ」として観れば文句なく楽しめるものでした。台詞を噛んでも、忘れてもお構いなし。いいじゃないですか、面白いのですから。僕はかつて原哲男や岡八郎、花紀京らキラ星のような芸人たちが輝いていた時代の吉本新喜劇を思い出していました。同時代には、松竹新喜劇を率いた昭和の喜劇王、藤山寛美がいた時代です。この頃、劇場中継は生で放送されていて、文字通り「台詞を噛んだり忘れる」ことはしょっちゅうでした。でも、根底にはいつも市井の人々に向けるペーソス溢れる笑いがあり共感を呼んだものです。来年結成20年を迎えるという藤志郎一座には、そういういわば「芸風」を感じました。高校演劇用の1時間サイズの戯曲も多く書いているそうです。来年もぜひ札幌へ来て欲しいと思いました。ちなみに、劇団内の女優ユニット、小劇場発アイドルグループと銘打ったQuick Theater。僕はこのチープさは大好きです。

     「劇団東京乾電池」の『授業』。あの柄本明のライフワークと言えるウジェーヌ・イヨネスコの名作不条理劇。膨大な台詞量を機関銃のように吐き出す生柄本を観るだけで十分価値がありました。TGRに花を添えるというよりも、大先輩が「俺の背中を見ろ」と言わんばかりの熱演でした。こうした極めて完成度の高い芝居を間近に観ることができるのも劇場祭の良さだと思います。

     「劇団ルート1」の『私に最期のさよならを』。なんと講評してよいかとても戸惑いました。この作品は札幌市こどもの劇場やまびこ座での上演で、やまびこ座のプログラムにも児童劇と書かれていました。でも、これは果たしてそのような劇なのだろうかとまず内容に素朴な疑問を持ったからです。横長に展開して舞台の奥行をほぼ感じない造作やきちんと彫られていない人物たち。役者の動かし方も平面的で、舞台にほぼ一列に並ぶのはないだろうと思います。やりたいことは分かるのですが…。

     「in the Box」の『そう』。初めて本を書いて演出したのは飛世早哉香。とても姿勢の良い目鼻立ちのはっきりした方できっと役者なのでしょう。演者の立川佳吾(トランク機械シアター代表)とはご夫婦だと後で知りました。立川と向井章人のコラボレーションという期待値には高いものがありました。札幌にはコンテンポラリーダンスシーンというものが既に出来上がっていると最近感じますし、向井を始め櫻井ヒロ、東海林靖志、河野千晶ら個性的な才能が登場しています。向井は確かな身体メソッドを持っていて、ソロはもちろんのこと、群舞の演出にも秀でています。企画としては面白かったのですが、やはり本の作り方が内容を含めて生煮えでした。舞台一つとっても頭の中で人物を動かしてみれば出ハケや暗転がとても多く、場転も段取りになることは予測できたと思います。あの新藤兼人や崔洋一、行定勲といった錚々たる映画監督が初演出の舞台でことごとく“討死”しているのを観ているので、舞台は難しいよなぁと思います。映画監督で舞台演出家としても成功したのは、「ライオンキング」のジュリー・テイモアくらいではないでしょうか。でも、始まり方はとても素晴らしかったです。オリジナルな着想はしっかりできていると思うので、台詞を磨き、役者をしっかり動かせる引き出しを持てれば面白いものができるのではないかと期待します。

     「ELEVEN NINES presents ギャルソンモンケ」の『乙女の祈り』。原作は昭和のレジェンド、「コント55号」の構成作家をやっていてこの業界に入った大先輩の水谷龍二の大傑作。初演は2002年、本多劇場。片桐はいり、光浦靖子、山田花子とまぁ濃厚な3人です。演出の江田由紀浩は前説で「原作のままでは札幌ではいりさんのように演じられる役者はいなので、札幌の役者で演じられるように大幅に脚色した」と話していました。が、こういう情報は幕が上がる前に観客の想像力を狭めるだけでまったく必要のないものです。先ずここでがっかりしましたが、江田の演出は非常に面白く観ました。札幌の演劇シーンでは、すっかりベテランの江田ですが、ギリギリ脱線する寸前で踏み堪えていて魅せました。役者陣(上總真奈、澤田未来、廣瀬詩映莉)の弾けっぷりも楽しかったです。特に弱冠19歳の廣瀬の吹っ切れ方が半端なく炸裂していて腹を抱えて笑いました。大器の予感。自分の組で、これだけキャスティングできるのですから、ELEVEN NINESは大したものだと思います。

     「劇団ログデナシ」の『ビューティフルガーベッジ』。この作品も講評が難しいです。というのは僕の年齢で観劇するのはちょっと厳しいかな。劇団結成2年で、本も力に任せて書きなぐっている感じですが、若い観客には受け入れられているように思いました。代表で作・演出のがくとに余計なお世話で一つ言っておきたいのですが、大炎上したDeNAのキュレーションメディアを見ても、もう「ネットだからこのくらいは許される」という時代は終わったのです。同じように、小劇場という閉じた小屋の中で何をやってもいいと勘違いしてもらっては困ります。この劇はある既存のブランドをディスることの上に成り立っています。はっきり言ってこれは創作という行為ではないと僕は思います。劇団名のようにならないよう、本当のオリジナルとは何かということをもう一度自問して欲しいと願います。

     「新芸能集団 乱拍子」の『いっすんさきは夢』。TGRの前にたまたまDRUM TAOの札幌公演を観ていて、和太鼓って凄いなと感動しました。TAOの残像もあって、正直前半は退屈でした。ですが、段々と和太鼓の鼓動が台詞のように鳴ってきて、その迫力に引き込まれていきました。特に冬の幕になってからは、舞台美術も素晴らしく、大家族中心で構成されたメンバーの息の合ったリズムは何か大きな表現を謳っていました。演奏者には子供たちや外国人、また障がいを持った人たちもいて、多様な観客との一体感を見ても、地域に開かれた活動を地道に続けているのだなと感じました。こうした活動は演劇・舞台が持っている社会的役割でもあり、劇場はそのことに大きく寄与することができるはずです。パフォーマンスの高さもさることながら、その点も評価され審査員賞を贈ることになりました。おめでとうございます。

     僕は演劇とは台詞であると信じていますし、それを現実のものとするのが役者の肉体性や精神性だと思っています。一番劇が自由なのは一本のサスの下に一人の役者がじっと佇んでいることです。役者がなにかの動作をすれば、あるいは何か台詞を発することで、劇は一定の意味を与えられていきます。つまり、劇はどんどん不自由になっていくのです。その不自由さの中で残る表現こそ、言葉こそ、物語こそ、僕は劇的空間だと思えてならないのです。劇が不自由な社会は息苦しく生きづらい社会でもあるでしょう。劇場祭の意味はそんなところにもあるのかもしれません。最後にTGRに参加された表現者の皆さん、劇場に関わるスタッフの皆さんに心からの敬意を表したいと思います。

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  • TGR札幌劇場祭2016 講評②

    TGR札幌劇場祭2016、講評2回目は、新人賞の審査員を務めていただいた桑田信治さんです。昨年に引き続き新人賞の審査員は2年目となります。
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    【プロフィール】
    初めて札幌演劇に触れたのは10数年前。その後、雑誌編集の仕事を通じて札幌の若手演劇人と交流を持つようになり、毎週末の小劇場通いが始まる。ジャンルや規模の大小を問わず、年間観劇本数は100本前後。仕事柄、作品の中身だけではなく情宣のデザインやライティング(文章)などにも拘りはあるが、客席では単純に泣いたり笑ったり。演劇は客席の自分と舞台との「個人的な出逢い」であり、いつまでも「ただの観客のひとり」として札幌演劇を観ていたいと思っています。

    【講 評】
    まずは参加された団体の皆さんに感謝を。素敵な作品をありがとうございました。
    昨年より2団体増えて7団体がエントリー。数が増えただけではなく、今年は全体的に安定したレベルを感じた、というのが僕の、そして審査委員皆の一致した全体感でした。それぞれに独自の志を持った作品を観せて頂きました。
    年々右肩上がりにレベルがあがってきている、という言い方ができるかどうかは別ですが、「TGRの新人賞」という目標に対するモチベーションは、回を重ねるごとに高まってきているのを感じます。これは僕個人の意見ですが、大賞より新人賞の方がいま現在はずっとシンプルに「賞を欲する」モチベーションが高い賞なんじゃないかな、とさえ思います。そこがこの新人カテゴリの素敵なところであり、今後は新人賞→大賞というステップの間に、若手演劇人の目標となる何らかの賞があってもいいんじゃないかと、「客席側」の僕としては考えます。(運営の方々のご苦労を考えると、賞をひとつ増やすのも大変なのでしょうが。。)

    若手・新人と言われるカンパニーの作品を多く拝見していて、僕は最近「もう、好きなように作って、見せてくれればいい」というような感覚になってきています。「これは特定の客層にしか届かない内容」とか「若者向けに過ぎる」とか、そんな事はどうでもよくなってきていまして。
    ただし、これは若手団体全体にいえる事ですが、同年代で作品を作っていく中で「演出の役割・責任」をもっと重要視していかなければいけないのでは、と強く感じます。作家が作ったモノを客席にきちんと届けるのが演出の仕事。特に作・演出が同一の場合はなおさら、台本を書き上げただけで満足せず、そこからもう一度ホンを解体していく位の気概で「演出」という作業と向き合って欲しいと思います。
    以下、僭越ながら各作品についていつものようにコメントさせて頂きます。
    (個人的感想として、★★★による評価も付記させて頂いています。)

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    ■劇団plus+『NAMARA』
    勢いの良さ、を感じました。どうせならもっと勢いで押し切ってもよかったかなと。
    背景設定などの粗さはまだまだ。あそこの土地でああいう国家の暗躍が起きる必然性や、スーパーのオーナーの設定など、話の本筋ではないとはいえもう少し緻密な骨格が欲しかったです。もしくは(逆に)設定の粗さを瑣末な事として吹き飛ばしてしまうほどの勢いで押し切るとか。
    主役のサクラコの表情が後半変わっていくのがいいなと思いました。が、全体としては各々の人物がまだその場の感情表現に終始してしまっているよう。先へと興味を持てないと、観ている側としては「会話」に疲れてきてしまいます。その場の感情表現だけではなく、各々の人物が各々の「想い」を最初から持っているからこそ話が収束していくはず。

    個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
    方向性(勢い)★★ (僕は旗揚げ公演も拝見しているので、そこからの「見せる作品」を作る、劇団としての進歩を感じました。)
    舞台美術★★☆ 桜の樹の質感が素敵。
    笑いのテイスト★★ 劇団の持ち味に育っていくかも。ただしもっとタイトに進めた方がいいかなと思う場面も。

    ──
    ■さっぽろ学生演劇祭『桜田四姉妹、婚活をする。』
    「幅広い年代の方に学生演劇の公演を知ってもらう」という合同祭の主旨のひとつからすると、今年の作品はその意義を体現する非常によい公演だったと思います。観客を限定しない楽しさ。客席のご年配の方もとても楽しんでいたので「合同祭」としては大成功だったのではないかと。
    片側で、「女装すればそれだけで笑いはとれる」のですが、その笑いを越えた何かが、どこかに欲しかったです。演劇を見慣れている人には物足りない面もあったのでは。話を難しくする必要はないと思いますが、例えばどこかに、ちょっとだけ「深み」が欲しかったかなと。
    (余談ですが、長女(男優)は「ブス」ってことになってたけど、かなり美人さんだと思いました。)

    個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
    笑い★☆ テンポのユルさはわざとなのかな。もう1段ギアをあげてほしかった。
    エンタメ度★★☆ 安心して楽しめる点は評価。そして、ユルくても笑わされる久保さんには感心。
    舞台美術★☆ 一幕舞台だが、リビングの壁に何もない(壁しかない)のが淋しくなかったですか。

    ──
    ■劇団・木製ボイジャー14号『拝啓 臆病者共』
    「新人賞エントリー」に対する気合い、意気込みを感じる作品。僕的には「戦略」もあったのかなと思います。が、それもまたアリだと思います。
    ボイジャーさんは既にかなりの場数を踏んでいるメンバー・スタッフ揃いで、劇団独自のスタンスがあり、公演毎に違う試みや独自の考えがあるのだと思いますが、ならば「TGRでの芝居」というアプローチがあってもいいのだろうとは思っていました。「賞を穫る作品」を作れる、というのも劇団の力です。
    この作品には、演出や展開など、審査委員の方々から色々な意見が出ました(「こういう展開じゃなくて」「こういう構成じゃなくて」などなど)。僕的に不満だったのはエンディングの演出。しかしそれらは「ダメ」ではなくて、このように活発な意見交換が生まれること自体が、この作品を評価しているということの現われ、というようなレベルでの話し合いであり、結果として今年の新人賞となりました。
    孤独を越えて生きるエネルギー、というストレートなメッセージにも個人的に討たれました。(タイトルを見た時点でわかっちゃう部分はちょっと残念でしたが)。

    個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
    脚本★★☆ 鎌塚さんのホンとしては、持ち味の温かさ・柔らかさとはまた別の面を見せていただきました。
    個々の人物★★☆ 役者のレベルは高い。ただし、それだけに芝居のトーンの多様性がもっと欲しかった。
    構成★★ 第1幕終わりの期待感が高かっただけに、第2幕の必然性に個人的には疑問。

    ──
    ■演劇ユニットカラフルホリデー 『ムーンライト ラズベリー』
    得票的には2位に終わりましたが、審査委員の間で評価の高かった作品。背伸びをしない作品の確かさ、物語づくり(脚本)の丁寧さ、芸達者な客演を脇に配しての人物の描き方、絡ませ方も好評価でした。(森さんもいつもと違うたたずまいに驚きも。)
    「天使モノ」はありがちではありますが、これは僕の好き系の話でした。ヨシダレオさんのツカミの上手さですっと物語に入れたのもよかった。
    物語の内容として、どうしても全体におとなしくなってしまう。本来そういう話ではあるんだけど、それじゃあそこをどう見せていくか。個人的な感想としては、後半に物語が加速する部分、そしてエンディング、という緩急の精度をもっとあげられれば、と感じました。役者の立ち位置、暗転や音出しなど、演出の精度自体をもっと上げていって欲しい。色々な意味で、まだまだ進化の余地ありです。

    個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
    物語性★★☆ 構成の緻密さ。人物の描き方にも好感。
    演出★☆ 脚本を活かすために、静と動をもっと緻密に演出できれば。
    役者★★ キャスティングのよさ。(しかし、演出はまだまだ役者を生かせたはず。)

    ──
    ■劇団ひまわりSPクラス『おいてけ堀のはげちゃびん』
    清水さんの脚本ですが、ホンに手を入れ、演出も道具もすべてクラスのメンバーの手で作り上げた作品だと聞いていますので、そういう観点で話をします。
    僕にはとても観易くて、清冽さや民話的な要素も好きな作品でした。奇麗なだけで終わるのかなと思われた後半の展開あたりからは、「人間の業(ごう)」をもう少し表現してほしかったかな、と思います(演出の濃度ですかね)。
    あと、役者が完全にハケないで待機しているのは客席の関係者へのサービスでもあるかと思うのですが(笑)、舞台に残り、今、演じている人を見る、という意義もあると思うんですよね。
    「見る」のはとても大事です。なぜなら、今1対1で会話している二人以外にも舞台には役者がいるわけなので。ともすれば会話してる相手とのやりとりだけに気が行っちゃうと思うんですけど、横に誰がいるとか、誰が脇からこっちを見てるとか、そういった中で自分はどう思いながらこのセリフを言ってるんだろうとか。そういった部分をもっともっと感じて、演じていってほしいなあと思いました。

    個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
    脚本★★☆ 物語性の高さは評価(しかし既存本としての評価に近い)
    演出★☆ 愉しさの要素、クライマックスなど、もっと確実に場面をの空気感を活かしたい。
    役者★☆ しっかりと舞台に生きている役者もいて好感。

    ──
    ■総合学園ヒューマンアカデミー札幌校『夏の夜の夢』
    本来は相当に長いこの戯曲をこの尺で公演するにあたり、どんな風に見せてくれるのかという部分にも非常に興味をもって見ました。
    割とオーソドックスに、壮大にはじまったので「大丈夫かな」と思って。これでずっと行くと客層的に結構つらいんじゃないかなと。しかし、前半と後半のテイストの差という問題はありましたが、楽しめるつくりになっていて、しかしその中で設定されたハードルに、キャストの生徒さんたちもよく食いついていって、お芝居や、シェイクスピアになじみのないお客さんにも楽しめる、素敵な卒業公演だったと思います。
    個々の役者さんには、華やかさや、セリフの上手さ、笑いや、歌など、それぞれに力量を感じる役者さんも発見。古典戯曲を絵空事にしないで見せるのか、それとも壮大な絵空事として観客を巻き込むのか。そういった面では、テイストの統一感に不満もありました。

    個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
    エンタメ性★★☆ ハードルの高い作品を、役者の技量を引き出しつつ、観客を楽しませるつくり。
    役者(個人)★★★ ハーミア役の生徒さんのセリフのフィット感にかなり驚く。
    演出★☆ 卒業公演という客層を考えると仕方がないのかも知れないが、テイストの落差に違和感も。

    ──
    ■総合芸術ユニット えん『紡人-つむぎびと-』
    かなり高いハードルにチャレンジした作品だなと思いました。そこは評価したいです。作者の描きたい世界は充分伝わってくるが、ここにもやはり、演出の「脚本の再構築」の不足を感じました。
    「何をやりたいのか」と「観客にどう見えるのか」は、やはり違います。演出がどう作品を作り上げていくべきなのかを、もっと精査すべきであったと思います。例えばヒロインの長ゼリフの中身も気になりました。脚本を物語として読んだ段階ではアリでも、実際に舞台で発した時、そのセリフは生きるのかどうか。(これは作者ではなく演出として精査すべき。また、同年代で構成された団体ならそれは演出だけでなく、役者の側から提案しなければならない時もあると思います。)
    世界観を作り出すためには、舞台では一瞬で流れていってしまうようなディティール(所作や時代考証など)も、細部まできっちりと抑えるべき。衣裳も、リアルにこだわるなら着こなし、履き物ひとつをとってもおろそかにできません。

    個人的絶対評価(3段階評価 ☆は0.5)
    物語性★★ 世界観や話の方向性は好き系。
    演出★☆ 村人たちの会話シーンや女性の所作など、もっと精査の必要あり。
    ラスト★★ ハッピーエンド(アナザーエンド?)に救われた。

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