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TGR 審査員の講評 【ラスト】/藤村智子さん

TGR札幌劇場祭2014、審査員の講評ラストは
TGRを主催する札幌劇場連絡会会長の藤村智子さんです。

札幌劇場祭は9つの劇場が企画を競い合う劇場の祭典。
藤村さんはその原点に立ち返り、今回のTGRを劇場ごとに振り返っています。

(以下、いただいた原稿です)

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札幌劇場祭のプログラムは札幌劇場連絡会に加盟する9つの劇場が企画する公演で構成されています。各劇場のラインナップがその年の劇場祭への興味関心を大きく左右します。各審査員の皆様は、当然参加作品に対する講評だと思いますので、私は今まで触れられる機会のなかった各劇場の企画という視点から振り返ってみます。

2014年劇場祭大賞はシアターZOO企画の韓国ソウルから参加したプロジェクト・アイランドによる「アイランド-監獄島」が受賞しました。また特別賞2つはコンカリーニョから、東京の劇団時間堂「衝突と分裂、あるいは融合」(作品賞)と地元札幌の劇団千年王國が小島達子演出「TOP GIRLS」(演出賞)が受賞しました。劇場祭を牽引する二つの劇場の面目躍如たるものがありました。

 ZOOは韓国から2つの劇団を招聘しました。劇場祭が開幕して間もない11月5日、6日に上演された「アイランド-監獄島」はその圧倒的な身体性と演技力で、この後にこれを超える作品が出てくるとは考え難いと思いました。もう1つは劇団可変「王女メディア-無残なメディアの詩」はソウル演劇祭の次世代の演出家コンクールで最優秀作品賞を受賞した作品。また盛岡市の劇団赤い風の「蛾と笹舟」も丁寧に作られた魅力的な舞台でした。札幌座はイヨネスコ「禿の女歌手」に挑戦し、一定の成果をあげたと思います。いずれも良質な作品が並び、劇場祭プログラムに奥行きを加える役割を果たしています。

コンカリーニョ企画の、特別賞[作品賞]を受賞した東京の劇団時間堂の作品「衝突と分裂、あるいは融合」も11月8日、9日と劇場祭前半での上演でしたが賞の候補作品として強く印象に残るものでした。また千年王國「TOP GIRLS」は他劇団から演出初経験の小島達子さんを起用するという思い切った手法が功を奏し、特別賞[演出賞]を受賞する快挙となりました。intoro「薄暮」は舞台美術も含め深い詩情漂う作品でした。コンカリーニョがレジデント劇団制なども含め、支援してきた劇団が今や札幌の実力派劇団として成長し、観客の期待に応えると同時に劇場祭のレベルアップにも貢献しています。

そして今年はBLOCHの企画の充実を評価したいと思います。公演する劇団も観客層も比較的若いのがBLOCHの特徴ですが、5企画のうちRED KING CRAB「おだぶつ」が新人賞を受賞した他、劇団coyoteが「愛の顛末」で大賞候補5作品の中に残りました。他は演劇集団遊罠坊「ひとかげ」、劇団パーソンズ「ハッカドロップ」、劇団アトリエ「愛と宗教」で、3劇団とも過去に劇場祭で新人賞を受賞している劇団であり、次の札幌の演劇界を担う存在として成長しています。劇場の性格を生かした良いラインナップだったと思います。
 
 札幌劇場連絡会には3つの公立劇場が加盟しています。その内2つは人形劇場のこぐま座とやまびこ座です。「人形劇団のレベルの高さに驚いた」と審査員の間で数年前からよく言われるようになっています。今年も新審査員から同様の感想を聞きました。老舗人形劇場のこぐま座、そして人形浄瑠璃を育ててきたやまびこ座、いずれも子供から大人まで楽しめる良質の作品が上演されています。今年20周年を迎えた、さっぽろ人形浄瑠璃芝居あしり座「座・競演vol.5」の公演は審査員奨励賞となりました。いずれ人形劇が大賞候補となる日が来るかもしれません。

 もう1つは札幌市教育文化会館です。例年オペラ作品での参加が主でしたが、ホールやオペラ団体のスケジュール等で、近年はオペラ祭を構成する3団体が揃って劇場祭に参加することが少なくなっていました。一方で賞へのエントリーはないものの北海道教育大学岩見沢校が実験劇場として「奥様女中」を見せてくれました。ほぼ毎年劇場祭に参加し、今年も「愛の妙薬」を楽しませてくれたオペラ研修団体札幌オペラスタジオが、この公演を最後に20年の活動に幕を下ろしたこともあり、今後オペラ祭及び劇場祭への参加プログラムがどのように企画されていくのか、教文の次の一手に期待したいと思います。

PATOSは5劇団が公演。word of hearts「正しいけれど正解じゃない」、わんわんズ「晴れ時々爆弾のち侍」、ロックボトム実行委員会「Rock Bottom4」、岸田國士の戯曲「留守」「秘密の代償」に取り組んだFAP’S企画、そして弦巻楽団「ナイトスイミング」。弦巻楽団は大賞候補作5作品に残ったばかりでなく、パトスという劇場空間をよく把握し、自在に舞台を構成していたことも印象に残りました。劇場としてはそろそろ意識的に働きかけて構成する企画へと変化してもいい時期ではないかと思います。
 
サンピアザ劇場は学生演劇祭の「遠い夜の夢」、劇団fire works「明日あの子に会いに行く」、25周年を迎えた劇団32口径は記念公演「SMILE」を上演しました。サンピアザ劇場は従来から、さっぽろ学生演劇祭を支援してきました。劇場の特色を出す意味でも良い企画だと思います。学生演劇の傾向として学園祭的ノリとでもいうのか、自分達が楽しむことに終始して観客を忘れているような舞台になりがちです。そこから抜け出すために劇場ができることはないだろうか、と今回も思いました。

cube gardenは札幌放送芸術専門学校タレント総合科2年の「BORDER~時をこえたmessage~」が企画作品となりました。まだ成長過程の舞台でしたが、伝えたいメッセージを持った作品ではありました。札幌市内にはタレント養成学校が数校あります。劇場公演の経験は実力をつける貴重な機会です。教文は高校演劇や中学校演劇のために舞台技術のノウハウなどを指導していますが、cube gardenも同様の役割を担うことはできないだろうか、とふと思いました。

以上、長くなりましたが9劇場の企画を概観してみました。劇場が劇場ならではの目を働かせて、あの劇場から上演の打診があった、ということが劇団の喜びとなるような状況が生まれたら、劇場祭はもっと面白くなると思っています。審査員であると同時に劇場連絡会の当事者としてのテーマでもあります。
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以上です。

これでTGR札幌劇場祭2014も終了です。
参加した劇場、劇団、そして審査員の皆さん、
おつかれさまでした。
そしてなによりも劇場に足を運んでいただいた皆さん、
ありがとうございました!
来年のTGRにもどうぞご期待ください。

今年も残りあとわずか。
皆様良いお年を。

また来年11月にお会いしましょう!

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