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TGR 審査員の講評 【5】/浅野目輝頼さん

審査員の講評5人目は、今年から就任していただいた浅野目輝頼さん。
浅野目さんは「さっぽろえんかん」(演劇鑑賞会北座)の事務局長として
これまで国内TOPクラスの演劇作品を数多く観られてきた方です。
そんな浅野目さんに果たしてTGRはどのように映ったのでしょう。

(以下、原稿です)
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TGR2014 (札幌劇場祭) に参加された劇団の皆さん、関係者の皆さん、大変お疲れ様でした。
約30年間、「演劇鑑賞団体」の専従事務局長だった関係で、これまでは東京を中心とする劇団(いわゆるプロ劇団)の作品を観劇していたので、地元で活動する劇団の舞台は、あまり観る機会がありませんでした。
今回審査員になったおかげで、地元劇団の数多くの舞台に初めて触れることができました。
そのため私は、他の審査員の皆さんと違って過去の舞台作品からの成長ぶりは分かりませんので、今回観劇した作品群の中から比較検討する方法で『大賞候補』の選定に臨ませていただきました。また、プロの舞台を鑑賞してきた経験が長いので、地元劇団は観るに堪えない作品が多いのではないか (生意気ですみません(^^;) ) という潜入意識をもたないよう、自分に言い聞かせて観劇しました。結果は、プロにも劣らない優れた舞台に幾つか出会えて驚きました。頼もしく思えたし、大変うれしいことでした。

「札幌劇場祭」スタート前の審査員の紹介コメントに、『 (大賞候補の)ノミネートにあたっては、私にとって心に残る舞台であるかどうか、また、創る側の真摯に取り組んでいる姿勢に共鳴できたかどうかが、その選択視になるかと思います。観客席の反応も楽しみながら観劇させていただきます。』と書きました。そして、審査基準として、『演劇は、総合舞台芸術なので、私は、脚本・演出・演技だけでなく、舞台美術・照明・音響などの効果も評価の基準にさせていただきたいと思います。』と記述していました。

『大賞候補』を決める審査員の皆さんとの事前検討会では、私は下記の5作品を推薦しましたが、私が推薦した作品からは3作品が最終的に残りました。この検討会では、他の審査員の方々の「観劇評」に大変刺激を受け、とても有意義な時間を過ごすことができ、かつ勉強になりました。
事前検討会でどんな刺激を受けたかと言いますと、他の審査員のみなさんは、(当然といえば当然なのですが) 地元の劇団のことをよく知っていること、そして、地元で優れた舞台作品の誕生を心から期待し、地元で活動する人々を基本的に愛している、ということです。皆さんがしっかり地元に根を張っていることを知りました。
『自分は、まだまだだなぁ…』と痛感した次第です。

「事前検討会」で浅野目が『大賞候補5作品』に推薦したもの
( ★は、「事前検討会」で審査員全員によって『大賞候補5作品』に選ばれた作品 )
★プロジェクト・アイランド「アイランド—監獄島」
★千年王國プロデュース「TOP GIRLS」
劇団赤い風「蛾と笹舟」
★弦巻楽団「ナイトスイミング」
劇団32口径25周年記念公演「SMILE(スマイル)」

個々の作品の感想は、全作品に触れず申し訳ありませんが、「公開審査会」で大賞を受賞した「アイランド—監獄島」(私も大賞として票を投じた作品) と、「事前検討会」での浅野目推薦のうち、残念ながら最終的に『大賞候補作品』に選ばれなかった2作品についてのみ、自分自身の記録的意味もこめて推薦した理由となった感想を記述しておきたいと思います。大賞を受賞した「アイランド—監獄島」以外の候補作品は、「公開審査会」で既にいろいろ講評されておりますので省略させていただきます。

プロジェクト・アイランド「アイランド—監獄島」
受刑者ジョンとウィストンを演じた役者2人の演技力が素晴らしく、見応えのある芝居でした。2人の緊迫感のある台詞の応酬は、感情の起伏、変化がビンビン伝わってきました。特に、同房の相棒が出獄(釈放)できることになり、それを自分のことのように喜びつつも、どこかで嫉妬する(妬む)気持ちを抑えられないという複雑な心情を見事に演じていたと思います。反体制思想の芝居を上演し、怒りをこめて権力に戦いを挑む最後のシーンは圧巻でした。
上演すればせっかくの出獄そのものが取り消されるかもしれないのに…と、観客としては、心が震えて仕方ありませんでした。感動的でした。舞台に敷き詰められた砂も効果的だったと思います。完成度の高い、素晴らしい舞台でした。

劇団赤い風「蛾と笹舟」
岩手県で初の直木賞を受賞した作家・「森 荘已池(もり そういち)氏」の小説を、単に朗読するのではなくて、小説の文体を丸ごと「セリフ」にして演じることで、演劇として成立させていたと思います。小説を読み上げるという芝居は単調になりがちなのですが、1人の人物を何人かの役者たちで交互に入れ替わり演じる手法を取り入れることで、トーンの変化も出て集中して観ることができました。役者たちのレベルも高いと思いました。
カラの植木鉢や、水の入ったグラスなどを使った「生演奏」も効果があったと思います。
私はこの作品も完成度が高いと思い大賞候補5作品の一つに推薦したのですが、最終的に選ばれなかったので残念に思っています。

劇団32口径25周年記念公演「SMILE(スマイル)」
人間の勝手な都合で毎年数多くのペット (犬や猫たち) が捨てられたり、その尊い命が理不尽に奪われています。悲しいかな、それが現実です。この舞台は、身体のどこかに障害を持つ犬たちが保護施設に収容され、飼い主が見つからず殺処分されていくさまをまっすぐに取り上げていて、その姿勢に好感が持てました。
犬たちにも心がある、しかし人間にはその心(声)が届かない、という様子が、犬の立場から描かれていたことがよかったと思います。犬たちの衣装はイマイチでしたが、ギャグは微笑ましく感じたし、息の合ったダンスは切れもあり良かったと思います。キラリが亡くなるシーンは涙を誘ったし、アリスの飼い主が見つかる最後のシーンはホッとした気持ちになり、静かな感動を与えていたと思います。
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(以上です)

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