TGR NEWS
HOME > 舞台芸術部門 参加作品一覧 > TGR NEWS > TGR 審査員の講評 【2】/加納尚明さん
TGR 審査員の講評 【2】/加納尚明さん

審査員の講評第2弾は、
今回で審査員2年目の加納尚明さん(一般社団法人プロジェクトデザインセンター代表理事)です。

加納さんは、札幌に演劇産業が拡がり、一人でも多くの志高い若者が
「演劇で飯が食える」ようになることを願い、観劇した作品に
独自の視点で「値付け」をされています。

実際の料金と加納さんの「値付け金額」、どちらが高いのか、安いのか。

ではでは、ご一読を。

(以下、いただいた原稿です)
1202_TGR審査会_4882

吾輩は、長嶋茂雄である。
「球がこうスッと来るだろ」
「そこをグゥーッと構えて腰をガッとする」
「あとはバァッといってガーンと打つんだ」
(少年野球教室にて)
私の講評は、こんな感覚で読んでください。

今年で審査員二年目です。昨年同様、札幌に演劇産業が拡がり、一人でも多くの志高い若者が「演劇で飯が食える」ようになることを願って、今年も「値付け」させてもらいました。
値付けには、「期待値」と「相対値」が大きく影響します。昨年観て、期待の高まっている劇団は、その期待との勝負にもなります。また、これだけいろいろな分野(現代劇、抽象劇、人形劇、浄瑠璃、オペラ、海外作品など)を同じモノサシで比べるのは、至難の業です。ほんとうに今年は悩みました。あの作品がこのくらいなら、この作品はこのくらいだよなあ。。。という上下比較が交錯します。

前置きはこのくらいにして、まず上位クラス(3,500円以上)は、「プロジェクト・アイランド」「時間堂」「劇団千年王國」の三劇団でした。いずれもそれぞれに総合的に値打ちのあるお芝居でした。大賞、特別賞を受賞したことからも多様な視点から上位であったことがわかると思います。
次に今年の特徴として2,000円グループと1,800円グループが形成されました。
2,000円グループは、「座・れら」「トランク機械シアター」「intro」。
1,800円グループは、「劇団可変(カビョン)」「ロックボトム実行委員会」「劇団パーソンズ」「劇団アトリエ」「劇団32口径」「劇団赤い風」。
この200円の差が、大きな差なのだと感じます。それぞれに、何かが物足りない。それが200の大きな差なのです。
また、2,500円~3,000円の「札幌オペラスタジオ」「さっぽろ人形浄瑠璃芝居あしり座」「札幌座」「弦巻楽団」は、2,000円グループに対して、それぞれに秀でる何かがあった作品でした。

では、個々の作品の値付けを紹介します。

11月1日 人形劇団ぱぺっとグース  お代1,000円>料金300円
演者が活き活きとしていてそのオーラが人形に現れていました。おもしろい舞台空間でした。たくさんの子どもたちが身を乗り出して観ている光景には、心が和みました。

11月1日 words of hearts お代1,300円<料金2,000円
全体を通して腑に落ちない芝居でした。登場人物の描き方や扱い方にどうも腑に落ちない点が多かったです。劇団として総合的に一定のクオリティがあると思うので、脚本をもっともっと練るとみどころを表現できる深みのある芝居になると思います。
昨年のTGR2013でとても好印象の劇団だったので、今年は期待値が高かった分、厳しい見方をしたかも知れません。

11月2日 座・れら お代2,000円<料金2,500円
フィギュア・アートという試みがとてもおもしろかった。通常の人が演じるお芝居とはまた違った表現を観ることができました。また演者の多様さが市民劇的な文化を感じました。

11月2日 演劇集団遊罠坊 お代1,000円<料金1,800円
お芝居にはストーリーがあり、最後にぞれぞれの帰結があると思うのですが、どうもつながってこない、見えてこなかったという感想です。いろいろな視点から考えてみたけど、何をどのように表現し、伝えたかったのか?しっくり来ませんでした。役者さんたちの演技は今年も真っ直ぐな感じで好感を持てました。

11月5日 プロジェクト・アイランド お代4,500円>料金2,500円
演技、音楽、照明、演出等々、総合的にとても見応えのある心に残るお芝居でした。1時間50分という長さを全く感じず、ずっと魅入っていました。特に、音楽と照明は傑出しており、リアリティと芸術性の両面を深く感じました。
お芝居は、どれだけ早く観客をお芝居の中に引き込めるかが一つの勝負なのですが、タイトルの「監獄島」とオープニングの音楽によって、一瞬にして“その場”に引き込まれました。
字幕劇には、ハンデがあると思うのですが、そのハンデを跳ね除ける迫力あるお芝居でした。

11月7日 札幌オペラスタジオ お代2,500円<料金4,000円
正直に言って、本格的なオペラを観たのは初めてでした。そんな私が審査員として評価するのはなんとも心が痛いので、初めて本格的なオペラを観た一人の人間の感想として記します。
お芝居と生歌と生音楽が混ざり合うおもしろさを感じました。ミュージカルとはまた違う味わいもあり、役者さんの技量もあったと思いますが、全体的に物足りなさも感じた観劇でした。

11月8日 トランク機械シアター お代2,000円>料金1,000円
トランク機械シアターは、“人形劇”という枠を超えた、“こども愛劇”と呼びたい。演者全員の表情、声、体の動きなど持てる全ての表現を通じてこどもたちへの温かな愛情が感じられました。舞台にいるお兄さん、お姉さんとの時間は、こどもたちにワクワクする心、優しく抱きかかえられる安心の心を感じさせてくれる舞台でした。
彼らの愛がこどもたちの心を育む。応援したいと思わせてくれる劇団でした。彼らのオーラに一番癒されていたのは私だったかも知れません。

11月8日 時間堂 お代3,500円>料金2,800円
実によく練られた素晴らしい舞台でした。脚本、演出、演技など総合的にチカラがあり、時間を全く気にせず最後まで興味深く観ていました。特に、セリフの一言、一言に奥が深く、ズシ、ズシと本質を突いていて、ふと我を振り返ることも多かったです。
時間堂の7名のキャストがしっかりと構成された上で、地域キャストが脇を添えることで地域キャストにとっても良い勉強になったでしょう。

11月8日 わんわんズ お代300円<料金2,000円
お芝居そのものは何がしたいのか?全くわからないし、申し訳ないですが興味をひかない内容でしたが、50分で終わらせた潔さに清々しさを感じました。きっと作品を創っていく中で、悩み、もがいた作品だったと思います。無理に無駄な枝葉末節を垂れ流す芝居がよくあるのですが、そうならなかったのは、自分たち自身が真におもしろい作品ではないことを自覚した結果ではないでしょうか?そこが潔いと思いました。

11月9日 さっぽろ人形浄瑠璃芝居あしり座 お代2,500円>料金2,000円
北海道で唯一の人形浄瑠璃芝居一座の20周年を記念した特別企画の公演とのことで、日本の伝統芸能を北海道で観られることに喜びを感じました。また演者は若い人も多く、将来性を感じました。伝統芸能の奥深さが多くの世代に楽しまれるために観る機会が増えていけばと思います。

11月9日 RED KING CRAB お代500円<料金1,500円
“家族”をテーマにした作品でしたが、最後まで舞台上の4人が家族には見えて来なかったです。腑に落ちないセリフが多く、脚本の甘さが気になりました。柱が無いというか、あちこちよそ見しているバラバラな感じでした。「エンディングノート」に目を付けた点は良いと思うので、柱にすれば良かったと思いました。
また演出も最後までしっくり来なかったです。約1時間50分の舞台でしたが、精査すると1時間くらいでも十分な舞台だったと感じました。

11月9日 劇団可変(カビョン) お代1,800円<料金2,500円
シンプルな舞台構成だが、演出、空間の雰囲気、音、光とお芝居の内容が混じり合い、一つの演劇としての世界観を創り出していました。原作を読んだわけではないですが、自分たちの作品としての表現をしていたと思います。

11月11日 札幌放送芸術専門学校 お代700円<料金1,000円
演出、演技、音響などいろいろ気になった点もあるが、死に急ぐ女子高生と死にたくない兵士が出逢い、生きることを考えるストーリー展開はおもしろかったです。ストーリーの中に組み込まれた漫才は勢いがあっておもしろかったと思います。

11月14日 劇団千年王國 お代3,500円>料金2,500円
チカラのある役者さんたちがしっかりとした作品に取り組むとこういうふうに見応えのある舞台になるのだなあと実感する舞台でした。特に、ラストの姉妹のやりとりは実にリアリティのある迫力がありました。役者さん同士のチカラとチカラが相乗効果を創出していたように感じました。
今、この脚本を選んだことにも意味を感じます。女性が活躍する社会とはどんな社会でしょうね?

11月14日 さっぽろ学生演劇祭 お代300円<料金500円
キャスト24名、スタッフ20名の総勢44名の合作という点では学生らしいお芝居だったと思います。但し、芝居の内容という点からは見所を感じることはできませんでした。学生だからこその視点、学生だからこその冒険、チャレンジを感じられなかったのが残念でした。合同祭だから小さくまとまるのではなく、合同祭でしかできない挑戦に期待したい。

11月15日 ロックボトム実行委員会 お代1,800円<料金2,500円
役者さんもよかったし、音楽もよかったし、脚本も悪くはないのですが、あと一歩何かが足らない感覚で観終わってしまいました。何が足らないのか?明確には答えられないのですが、無難に納まっているというか、深掘り感がなく、伝わってくるものが浅く感じました。全体としてはよくできたお芝居だとは思いますが、もっとおもしろいお芝居になると思いました。

11月15日 劇団パーソンズ お代1,800円<料金2,000円
小気味よいテンポ、役者さんのハツラツとした姿、物語の展開などとても楽しいお芝居でした。パーソンズスタイルが少しずつカタチになっているように感じます。
70分ちょっとのお芝居でしたが、ダラダラ詰め込んで長引かせなかったのがよかったです。今の実力通りのお芝居だったと思います。これから先さらに芝居を重ねることで90分、120分の楽しいお芝居が創れるようになってもらいたいです。

11月17日 札幌座 お代3,000円>料金2,500円
標準的な価値観ではなく、新たな価値観、視点から演劇の魅力を発信しようとする挑戦的なお芝居に感じました。そして役者さんたちの役になり切るチカラが凄かった。あの訳のわからない支離滅裂なセリフを次から次へと展開していきながら観客を惹きつけるのは、並外れた役者力・演出力だと思います。
万人受けはしないでしょうが、こういうお芝居もあるのだなあと心に残るお芝居でした。

11月20日 劇団Fireworks お代300円<料金1,500円
お芝居には、舞台上に“登場人物”が存在する。発表会は、舞台上に“演者”が存在する。この違いがお金を取れるか取れないかの境目だと思います。
そして、私には、舞台上にいたのはずっと“演者”でした。決して役者だけのことではなく、作品全体でこの舞台上の存在が決まります。縁故者の反応ではなく、一般観客の目線でもう一度、自分たちの作品を見直してみると足らないものが見えてくるかもしれませんね。

11月21日 弦巻楽団 お代2,800円>料金2,500円
脚本、演出、役者、舞台美術など総合的な視点からなかなかおもしろいお芝居でした。
20年のときをこのような描き方で考えさせるのはよく練られた作品だと思います。ありふれた展開で、20年前の自分自身が出てこないのが良かった。
また、椅子の座面の釘の反射で宇宙空間を表現するシーンは、異空間に引き込まれました。舞台美術と演出の妙ですね。
全体を通して、弦巻楽団の実力を初めて垣間見た作品でした。

11月23日 劇団アトリエ お代1,800円<料金2,000円
独特の感性を持ったお芝居でした。「愛と宗教」という答えのないひとり一人の心、観念について芝居を通して観客に投げかけることができていたと思います。但し、作品としての感動や感嘆はありませんでした。ただ投げかけるだけではなく、その壁を越えたとき、劇団としてもう一回り確かなものになるのかもと思います。
舞台上の動きからよく稽古された作品だと思いました。

11月27日 intro お代2,000円<料金2,800円
intro=イトウワカナ=演出の妙 というブランド=先入観がある観客も多いのではないでしょうか?少なくとも私にはその期待感が自然にありました。そして今回の作品を通して感じたことは、「納得してるか?」でした。映像や音楽の使い方に時折、心を動かされたときもありましたが、お芝居全体として迷走感がありました。「薄暮」だからそうなのかとも思うこともないのですが、心に痞えの残るお芝居でした。

11月28日 劇団32口径 お代1,800円<料金2,500円
私は、様々なNPO活動にも参加しているし、しっぽの会さんの活動も素晴らしい活動で、この作品の趣旨には大賛同です。でもこの作品には、感情として湧き起るものがありませんでした。その理由を考えてみると、登場人物である犬が話し過ぎたからか?犬が語る言葉も結局は人間が語る言葉に過ぎない。人間が動物を飼うとは?・・・そんなことを考えていました。
もし犬役は一切、言葉を話さない。演技だけで表現する。犬を粗末に扱う人間(社会)の問題(状況、感情、言い訳)に焦点を当て、犬が語った言葉を観客が想像するお芝居だったら、きっと私の涙腺は緩んだままで、より心に残るお芝居になったと思います。

11月29日 劇団赤い風 お代1,800円<料金2,500円
地域の大切なものを守り続けようとする劇団の姿勢を強く感じました。一方で、時代が進み、生活環境や価値観が変化する中で、この作品の価値を伝え続ける難しさを感じました。音楽がとても素晴らしかったです。

FAP’S企画、劇団coyote、TUC+KYOKUの三作品は、出張のため残念ながら観ることができませんでした。三劇団のみなさんにお詫び申し上げます。

最後になりますが、今年は、昨年より全体的にお客さまの数が増えていたように感じました。とても喜ばしいことです。各劇団がそれぞれの個性、実力を磨き、多様な作品が観られるまちになることで、より多くのお客さまが劇場に足を運びお代を出してもらえるようになると思います。札幌の演劇界の応援団の一人として、私もできることで寄与していきたいと思います。「演劇で飯が食える」まちに!

Category: NEWS