TGR審査員の講評 第4弾

ちょっと間が空いてしまいました、すみません。

4回目となる今回は、こちらも今年から審査員になっていただいた編集者・ライターのドゥヴィーニュ仁央さんです。

ドゥヴィーニュさんは、フリーペーパー「WG」(2007年9月より不定期発行)の編集者であり発行人。「WG」という名前には「WIT=ウイットに富んでいて楽しい」、「GRAVITY=真面目に、真剣に」という二つの言葉が表すように、読んで楽しいものを真面目に作っていきたいという想いが込められているそうです。

では、以下、ドゥヴィーニュ仁央さんの講評です。
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劇団の皆様、及び関係者の皆様、約一カ月間にわたりお疲れ様でした。
自分が見た作品に関しては、自身のサイト(http://www.freepaper-wg.com/ )で紹介していますので、一つ一つの作品に対してはそちらをご覧頂くとして、ここでは全体的な感想を書かせて頂きます。

TGRでは、期間中多くの作品に触れることで、この社会や人間という存在について、はたまた演劇というものに対して思考を深めることのできたことが、自分にとって大きな収穫でした。
演劇観や表現に対する考えは人それぞれだと思いますので、以下に述べることも、あくまで私個人の考えということで読んで頂ければ幸いです。
今回審査員として参加するにあたり、事前準備として、初めて演劇についての本を数冊読みました。演劇史や、近年世界的に加速している傾向など実に興味深く、演劇の奥深さに興奮しつつも、現代美術やコンテンポラリーダンスなど多ジャンルとの境界線はだんだん交じり合っていくのだろうな、と、実際に東京などでもいろいろと見て回って感じたのでした。
さて。
ますます多様になっていく演劇ですが、その点からすると、今回賞をとった『素麺』、『モスクワ』、『不知火の燃ゆ』は、そのことを象徴する並びのような気もします。
一見ストレートなスタイルに見えながらも、物語を語る要素がとても豊かで、かつその土地と強く結びついている『素麺』。ストレートなスタイルでありながら、全体を貫く姿勢に「今」が反映されているように感じた『不知火の燃ゆ』。そして従来のスタイルなんぞは自由に解体し、作品を立体化させる上でいろいろな要素を投入していく『モスクワ』。
もちろんこの3つ以外にも、個性あふれる素晴らしい作品はいくつもあり、早くも来年のTGRが楽しみになっております。
もう一つ。
TGRは、エントリー作品に対して講評があるということも利点の一つだと思います。建設的な意見がもらえる良い機会ですので、若い方々にはもっと冒険の場として、この場を利用してほしいなと思いました。
どんなジャンルの表現でも、それに触れた人からいかに言葉(考え)を引き出すかが大事なのだとしたら、「可もなく不可もなく」なものって、案外何も語ることができません。それならむしろ、否定的な言葉だとしても語らずにいられない作品の方が面白い。
審査員から辛口コメントをもらったとしても、個人的には、そういう劇団は今後「化ける」可能性が大きいと捉えておりますので、ぜひ化けて、来年驚かせてください。
長くなりましたが、最後に、ある冊子で目にした與那覇潤さんの『多義性の愉しみへ――東アジアから考える芸術と政治』という文から、一部をご紹介して終わりにしたいと思います。
「一つの解釈しか存在しえない芸術はつまらない。(中略)むしろ観劇のあとに、全体のメッセージについて、個別のシーンの意味をめぐって、同伴者とのあいだでもすれ違うさまざまな評価のなかで、最後まで一つの結論には収斂しない多様な解釈の森に分け入る、その愉しみを享受したいと思って、劇場に足を運ばれている方がほとんどではなかろうか。」
本当にどうもありがとうございました。
また来年、どうぞよろしくお願いいたします。
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以上、ドゥヴィーニュ仁央さんの講評でした。