TGR2010大賞 審査委員総評[秋山孝二さん]

審査委員総評[その1]

劇団TPSの大賞受賞で幕を閉じた今年の「TGR札幌劇場祭2010大賞」。
今回初めての試みとして「公開審査会」を開催し、審査委員の皆さんの声を
舞台を観劇した皆さんや賞にエントリーしたカンパニーの方々にお届けしましたが、
時間の制約もあり、言い足りなかった部分もあったかと思います。
そこで今回改めて各審査委員の皆さんに「総評」を執筆していただきました。
書き方、内容等は審査委員の皆さんにお任せしています。
本日よりこの欄で連載していきますが、長いものは数回に分けて連載するかもしれません。
皆さんも総評を読みながら、今年のTGRを振り返ってみてはいかがでしょう。
トップバッターは、今年から審査委員に加わっていただいた秋山さんです。

●審査委員・秋山孝二さん(公益財団法人秋山記念生命科学振興財団理事長)の総評

(以下、秋山さんの総評)

今回、審査員をやってみて、「審査」って何だろう?と思いますね。賞自体の存在が、この祭典に参加した方々の今後のモチベーション向上につながることが大切です。公開審査でも言いましたが、「『スポーツ』とひと言で括って、野球、バスケットボール、バレーボール、サッカーの中で、どのチームが一番?」と問われているような感じです。舞台芸術の幅の広さと多様性、「総合芸術」と言われるだけあって、役者だけでなく、原作・脚本・演出・音楽・照明・衣装等、多くの方々の努力の結晶であることを再確認すればする程、ジャンルの違いを審査にどう反映するのか、それはこの「札幌劇場祭」の目的と大きな関係があると思います。演劇というのは指向性・メッセージ性が強く、結局は、「好き・嫌い」の選考なのかも知れません。

この札幌劇場祭の過年度分の記録を読むと、審査員の大変辛口のコメントが多い年もあったりで、覚悟はしていました。これまでの観劇では、開始3分くらいで「ハズレ」と感じる演目もあるのですが、今回集中的に観たエントリー作品はいずれも面白く、辛口の指摘が功を奏してレベルが上ってきているのでしょう。

こぐま座・やまびこ座には、今回のような機会が無ければなかなか足を運ぶことはなかったと思います。小さなお子様を連れた保護者の方、保育園の先生たちを含めての観客に対して、熱演の人形劇・芝居・パフォーマンスは、大変感動的でした。舞台だけでなく、観客の子どもたちを見ていても興味深かったですね。ちょっと単調なセリフのやり取りの場面では、大変素直に寝転がったりぐずったりの反応、感情表現も豊かで舞台にまで駆け上がらんばかりに近づく子もいたりしました。小さい頃からこういった「優れた」芝居に接することが、将来の芸術・文化の担い手育成の基盤であり、これからも大切にしたい札幌の宝です。

「大賞候補」となった5つの作品のうち、原作がオリジナルは一作品だけでした。この賞が「すそ野を拡げて基盤をつくる」、「担い手育成」を目的とするのなら、何か地元発の新しい作品・脚本を促進する仕掛けがあってもいいのかな、と思います。もう一つ、「劇場祭」と銘打っての企画ですから、9つの劇場のそれぞれの奨励賞みたいな賞があると励みになるのではありませんか。「市民劇団」の活躍と熱い観客を目の当たりにすると、一層そんな気がします。

私は、「気に入られたいオジサン症候群」で、若い方々の芝居をかなりの違和感があっても「分かろう」と努力しているつもりです。「あのセリフは良く理解出来なかったけれど、多分こんな意味なのだろうな」と勝手に納得させる自分がいます。決して創り手に対して攻撃的にはならないタイプだと自認しているのですが。でも、審査・選考では、その辺の私の思いは恐らく若い世代には伝わらないのでしょうね。自分の感想を「講評」と称して語ると、「還暦世代のオヤジに何が分かる!」と、まぶしいライトの向こうに座っている関係者からの声を感じます。「新しい観客を増やすこともこの劇場祭の目的であれば、観劇の次の予定を設定する為にも上演時間をあらかじめチラシに表示して欲しい」、「事前に演出家の作品にかける思い等をチラシで明示してもらえないか」、先日の公開審査会でもそう言うのが精いっぱいの私でした。審査会終了後の交流会で、参加された劇団関係の方々と審査員の講評に対する感想も含めて、もっと突っ込んだ意見交換をしたかったです。

今回残念だったのは、韓国からの二つの演劇が大賞・特別賞に選出されなかったことですね、私は二つとも自信を持って推薦したのですが、ノミネートにもなりませんでした。一昨年・昨年と韓国各地に、札幌からの同行ツアーで行きましたが、現地の劇団で観客を意識した確かな演技力と楽しませようとする姿勢は、今回の芝居でも十分発揮されていました。しっかりと伝統を受け継ぎ、現在の社会問題にも鋭く問題提起をする、そんな現実と真摯に向き合う姿に感動しました。今後は、外国からの参加の場合、事前・事後の簡単な芸術・文化の紹介・企画も必要なのかもしれません。多様性社会の価値は、すなわち「違い」から学ぶ姿勢です。

今回の「第6回劇場祭」、札幌市内9つの劇場が連携して年一回の「祭典」にまで漕ぎ着けるまでには、準備会から始まり関係者のご尽力があったのだと思います。ここまで創り上げてきた価値を高く評価すると同時に、この企画が札幌ブランドの世界へのプロモーションとして貢献し、これからも進化し続けることを切に望みます。

参考: http://www.akiyama-foundation.org/weblog/?p=6621

http://www.akiyama-foundation.org/weblog/?p=6707

http://www.akiyama-foundation.org/weblog/?p=148