札幌舞台芸術賞 審査委員講評vol.3 飯塚優子さん(レッドベリースタジオ主宰)
審査委員講評3回目は、飯塚優子さん(レッドベリースタジオ主宰)です。
レッドベリースタジオでも演劇ほかさまざまな催しが行われています。
皆さんも足を運んでみてはいかがですか?
興味のある方はコチラ!
では飯塚さんの講評です。
(以下、いただいた原稿です)
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初めて審査員に加えていただきました。
エントリー作品26本のうち、劇団動物園と劇団めまんべつは
どうしてもスケジュール調整がつかず、観ることができなくて、
本当に残念でした。
審査にあたって、私の視点は以下の2点です。
1.発想の核心が鮮明に見えるか。
2.台本に納得できたか。
まず一点目について、例えば大賞の劇団千年王国「贋作者」は、華やかなシーン
が次々と展開され絵巻物を見るように素敵でしたが、私が一番印象に残っている
のは以下のようなシーンです。家出して女郎屋に居候している主人公のもとへ、
母から豪華な弁当が届けられます。いつものように手をつけないので女郎さんが
野良猫にやります。
ややあって
「雁次郎、猫、死んじゃったよ」
そのひとことが、急な展開の兆しをはらみ、物語の厚みを示して鮮烈でした。
TPS+青羽「蟹と無言歌」のポツポツ途切れる言葉のすきまに、冬の札幌の詩情
や、語られない物語の情感が漂いました。国籍を超えて人と人が出会える地点は
何処にあるのか、という柔らかな問いが余韻として残りました。
プラズマニア「COLORS」と弦巻楽団「十二月組曲」。かたや、いち女性の記憶の
底に展開する伝説的世界。かたや師走という世相に託された願いの群像。全く異
なる世界ですが、いずれも疾走感を基調に組み立てられています。入りくんだス
トーリーや、めまぐるしいパフォーマンスも、物語の鍵となる言葉や、象徴的な
シーンが際立てば、全体を見通すことができます。そのメリハリとテンポが演出
の要だろうと思いますが、危ういところで楽しむことができました。ただし、意
図的とはいえプラズマニアの大音響は限度を超えています。
2点目の台本の問題について。
言いたいこと、伝えたいニュアンス、それで結局どうなのか、という基本的なこ
とが、それなりの説得力で伝えられなければ、上演する意味がありません。観客
の共感を得るか、反論や拒否が起こるか、いずれにしても、作家自身が内なる根
拠をしっかりと抱えて語らなければいけないと思うのです。
若い人の作品に、戦争や平和、心の病や家族、といったテーマの作品が多かった
のですが、結末にずいぶん無理があるのは、なぜでしょうか。
社会的課題や身近な問題に対して、若い人が若い人なりの切実な視点を持つこと
は当然ですが、分からないことに安易な解決を語ってはいけないと思います。
その点で、高校生劇団F.A-muse「いろいろ」は、等身大の日常に、人間の面白
さを巧みに盛り込みました。
また精神病というテーマを取り上げた劇団32口径「LET IT BE」は、非常に抑制
の効いた脚本でした。実在の人物たちの生活エピソードに取材したのでしょうか、
おそらく余計な創作をせず、むやみに深刻にせず、おおげさに笑いを作らず、根
拠のない未来や解決を語らず、現実から遊離することなく、危うげにみえて豊か
な人間集団を描いています。
P3「A LIVING DEAD BLUE$」は、誰も彼もが死んでしまう、どうにもよく分から
ない展開と結末ながら、作者が確信をもっているらしいことが伝わってくるのが
不思議です。
今回集中的にたくさんの芝居を見て、札幌には(道内各地に)思いのほか、おも
しろい役者がたくさんいる、と感じました。
役者として力量あるひとがけっこうな人数居るようです。また未知数だけれど面
構えがいいとか、立ち姿が美しいとか、特有の雰囲気があるとか、そういう人た
ちが、男女とも20代なかばから30代前半くらいに相当数いるようです。PLANETES.
「Faith」が印象に残っているのは、初めて見た役者たちがちょっと良くて、殺
陣が決まっていたからでしょう。
若い演劇人が貪欲に成長する機会に恵まれ、キャリアを積んで、演劇を仕事にす
ることを目指せる環境が欲しいと思います。
そしてもう一度見たい、誰かにすすめたい、誰かと一緒に見たい、と思わせるこ
とのできる作品が、これからもたくさん生まれることを待望します。

