Theater Go Round 2009 舞台芸術部門

札幌舞台芸術賞 審査委員講評vol.1 早川渉さん(映画監督)

札幌舞台芸術賞の5名の審査委員より講評をいただいております。
審査委員の皆さんは、どのように作品を観ていたのでしょう。
この欄で随時紹介していきます。
1回目は映画監督の早川渉さんの講評です。

(以下、いただいている原稿です)
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「1スジ2ヌケ3ドウサ」という言葉が映画界にはある。
日本映画の父と呼ばれるマキノ省三(1878−1829)がよく言っていたといわれる言葉で、「スジ」とはストーリーの良さ、すなわち脚本。「ヌケ」とは画面のヌケが良いこと、すなわち撮影。「ドウサ」とは役者の演技。
画面で勝負する映画という表現方法においても、面白さの基本は、まず「脚本」なのだ。

結論から言おう、「脚本」が弱いのである。

いくら魅力的な役者が演じても、面白い着想のストーリーでも、素敵なセットや衣装で飾っても、観客を舞台の世界に巻き込んでいく脚本の力が弱ければ面白い芝居にならない。演劇もまず「脚本」を大切にして欲しい。
今回の「札幌演劇祭2009」の作品群を見て強くそう思った。

個人的に印象に残った舞台をいくつか。
演劇大賞の劇団千年王國「贋作物」は圧倒的に面白い作品だった。脚本の見事さはもちろん、演出の的確さ(特に緩急の付け方と舞台空間の使い方!)、役者の演技、美術・衣装・小道具の見事さな等々、出会えたことを感謝したくなるほど素晴らしい舞台だった。今回はこの作品を観られたことだけでも大満足。

劇団動物園「ホテル山もみじ別館」は「贋作物」とは真逆の面白さを持った舞台だった。特別賞を受賞した鈴江俊郎氏の巧みな脚本の力は確かに素晴らしいのだが、それ以上にたった4人の出演者の息づかいが、アットホームな小屋の雰囲気と相まって素晴らしい演劇空間を作り上げていた。イイ脚本に負けない的確な演出とそれに応えた役者4人に拍手を送りたい。

白A「テクノデリックコメディーショー」は、今回最も驚かされた舞台。
役者のパフォーマンスと映像や音楽のギミックを見事に融合させた楽しくてアートな知性を感じさせられるパフォーマンスだった。

劇団32口径「LET IT BE」は、扱いが非常に難しいテーマを見事な距離感で描ききった脚本と演出が印象に残った。

その他にも、
劇団めまんべつ「ニコ没物語」のまっすぐさ
EC.DELTA「GREEN GREEN」の若い役者(特に女性陣)の躍動感
国境なき意志団「コトナリ」の照明とファンタジー空間のうまさ
やまびこ座・こぐま座プロデュース「金のひしゃく銀のひしゃく」の美術装置の見事さ
P3「A LIVING DEAD BLUE$」の分けの分からない気持ち悪さ
などが印象に残った。

イイ「脚本」を書くにはどうしたらいいのだろうか?
テーマや題材は関係ないと思う。エンターテーメント系であれストレートドラマであれゲーム系であれファンタジーであれ、
キーワードは「人間」と「言葉」ではないだろうか。
「人間」をどれだけしっかりと見つめて描くことができるのか。
「言葉」を(発さないことも含めて)どれだけ絞り込んで必要な物だけを宝石のように磨き込んでいけるか。
その次に来るのが「演出」や「演技」であろう。
シンプルではあるが、一番時間をかけて取り組んでもらいたい部分である。

来年も楽しみにしています。
参加された劇団や関係者の皆さん、ありがとうございました。

早川 渉

2009.12.17